必要経費をあえて10%削る
※2015年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
先日、税務調査のセミナーで講師をして、
その懇親会で税理士から実際に質問されたことを
テーマにお伝えします。
税理士「弊所では、顧問先の了解を取って、
できるだけ必要経費を10%程度削るように
しているんですが、どう思いますか?」
私「それはいいですね!そうすることで
税務調査に入られにくくなりますし、
入られても反論しやすくなりますよ」
さて、この論理を説明しましょう。
必要経費の家事割合分をあえて自己否認しておくことで、
税務調査に入られにくくなります。
例えば、青色決算書の「減価償却費の計算」のところに
乗用車が載っていて、減価償却を100%していると、
調査官としては税務調査で否認できるものと思って
調査先に選定することになります。
なぜなら「車を事業用で乗っていることは事実としても、
プライベートでも少しくらいは使っているだろう」
と疑うからです。
逆に考えると、10%だけ自己否認
(事業専用割合を90%)しておけば、
必要経費を削るという調査をやりにくいことがわかり、
調査先に選定するのを嫌がる、というのが事実です。
所得税の調査でもっとも簡単な否認方法は、
必要経費を削ることなのは、ご存知のとおりです。
車の例えは、決算書上で減価償却資産として
載っているものなので、調査官も見た瞬間わかります。
では、減価償却費ではなく、接待交際費や家賃、
交通費など、決算書上で否認割合が明示されていない
科目の場合は、どうすればいいのでしょうか。
このような場合は、青色決算書の裏面(3ページ)
右下にある「本年中における特殊事情」の欄に、
自己否認割合を下記のように明記しておくことです。
「地代家賃のうち、○○%は家事費として計算し、
必要経費には算入していません」
こうすれば、調査先の選定段階で、調査官が
特殊事情欄を読み、調査に入る意欲が薄れます。
また、10%など自己否認したうえで調査に入られても、
否認指摘は受けにくい、もしくは否認指摘されても
反論しやすいのが事実です。
100%必要経費にしておくと、
「100%ではないでしょう!?」と調査官に
指摘されると、「確かに100%ではないかな・・・」
と反論することは難しいでしょう。
こうなると、否認されるのを前提にして、
何%を削るかという交渉にしかなりません。
10%を自己否認し、事業供用割合を90%にしておけば
「90%も必要経費はないでしょう!?」
と指摘されても、「じゃあ何%が適正っていうんですか?」
と反論することができます。
調査官も、「○○%ですよ!」と指摘するためには、
その根拠を明示しなければなりませんので、
安易に割合を言うことができないのです。
たった10%削るだけで、調査に入られにくく、
また入られても反論するのが簡単になりますので、
顧問先の了解を得られるのであれば、
ぜひ自己否認したうえで、決算書に明記してください。
また、上記本論から外れますが・・・
同じセミナーで質問を受けたので書いておきます。
事業主が妻を青色専従者にしていて、
事業主が赤字になった場合、夫は妻の
配偶者控除の対象になります。
給与を払っている方が扶養されるのは
おかしい、と感覚的に思うようですね・・・
「こうして申告すると、税務署に
何か言われますか?」と聞かれたので、
「何も言われません。普通のことです」と回答しました。
この点は、勘違いされている税理士が
多いようですので、確定申告の参考になれば幸いです。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。