意見聴取された年分で税務調査は?
※2016年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
一度税務調査された年分について再度税務調査が行われることを
「再調査」と呼びますが、この行為は法的に制限されています。
国税通則法第74条の11第6項
第1項の通知をした後又は第2項の調査(実地の調査に限る。)
の結果につき納税義務者から修正申告書若しくは
期限後申告書の提出若しくは源泉徴収による所得税の納付が
あつた後若しくは更正決定等をした後においても、当該職員は、
新たに得られた情報に照らし非違があると認めるときは、
第74条の2から第74条の6まで(当該職員の質問検査権)
の規定に基づき、当該通知を受け、又は修正申告書若しくは
期限後申告書の提出若しくは源泉徴収による所得税の納付をし、
若しくは更正決定等を受けた納税義務者に対し、
質問検査等を行うことができる。
この規定のとおり、「新たに得られた情報に照らし非違が
あると認めるとき」は再調査ができるわけですが・・・
この法的規定が新設されてから「より」、
国税は再調査をしない傾向があります。
そもそもからすると、税務調査が結了すれば
その結果がKSK(国税総合管理システム)に入力されるので、
少なくとも調査対象年分については次回から税務調査の選定に、
システム上、上がってこない仕組みとなっているからです。
調査官も上記規定についてはかなり敏感になっており、
再調査をあえてしようとは考えていないのが実情です。
さて、では意見聴取された年分はどうなるのでしょうか?
意見聴取されて、是認となった年分も
税務調査の対象となるのでしょうか?
ちなみに、意見聴取の結果として是認になった場合、
下記が記載された文書が発行されることになります。
「特に問題とすべき事項は認められず、
現在までのところ調査は行わない」
「後日、申告内容について新たな疑問等が
生じた場合には、調査を行うこともあります」
そもそも意見聴取とは、税理士法で定める行為であって、
税務調査ではありませんので、上記の法規定は適用されません。
税理士法第35条第1項
税務官公署の当該職員は、第33条の2第1項又は第2項に
規定する書面(以下この項及び次項において「添付書面」という。)
が添付されている申告書を提出した者について、当該申告書に
係る租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知して
その帳簿書類を調査する場合において、当該租税に関し
第30条の規定による書面を提出している税理士があるときは、
当該通知をする前に、当該税理士に対し、当該添付書面に
記載された事項に関し意見を述べる機会を与えなければならない。
その一方で「現実的には」、意見聴取された年分は
税務署内では再調査と同じ取扱いになっており、
通常は税務調査をしないことになっています。
意見聴取も税務調査と同じで、その結果が
KSKに入力されており、税務調査のシステム選定に
上がらないことになっているからです。
税務調査と意見聴取は明確に法的規定は違うにしても、
税務署内の取扱いは実質的に同じなので、
意見聴取を受けて是認を受ければ、
いったんは安心してもいいと判断できます。
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