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2025.02.14

扶養控除の対象範囲と判断に迷いやすい事例(後編)

※2024年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガまで2回にわたり、所得税の確定申告
における【扶養控除】の判定について解説しましたが、
今回は最終回として、その他誤りやすい論点を取り上げます。

まず、扶養控除を受ける要件(の1つ)として、
「年間の合計所得金額が48万円以下であること」
(令和元年分以前は38万円以下)があるわけですが、
「合計所得金額」の定義については下記を参照してください。

国税庁サイト「合計所得金額」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/yogo/senmon.htm#word2

合計所得金額48万円以下の判定で注意すべき事項として、

申告分離課税の所得を【加算した金額】で判定
(退職所得は申告不要でも加算)

分離課税の譲渡所得の金額は【特別控除前】

純損失や譲渡損失の【繰越控除適用前】の金額

上場株式の配当など【申告不要とした額は含まない】

が挙げられます。実務上はこの判定が意外に難しく、
誤りやすいのでぜひ注意してください。

また、国税職員向け(内部の)質疑応答事例集において、
扶養控除の誤りやすい事例として毎年取り上げられている
項目として、「扶養控除の事後的変更」があります。

実務上はよくあることかと思いますが、
夫・妻の共働き世帯において、子供をどちらの扶養にする
かの有利不利判断は、所得金額が大きい方になります。

一方で、後になって「実は妻の方が所得が多かった」
「子供が3人いる場合、2人だけを夫の扶養にすれば
よかった(妻が1人を扶養にした方が得だった)」
「夫が負担した医療費が多額だったから妻の方が有利だった」
など、事後的に扶養控除をとる側を変更すれば
世帯内での所得税が少なくなるケースがあります。

結論としては、確定申告書を提出した後の
修正申告もしくは更正の請求で控除対象扶養親族の差替えを
することはできないのですが、こちらを参照してください。

国税庁質疑応答事例「控除対象扶養親族の差替え時期」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/33.htm

この質疑応答事例では、夫が子1人を扶養で確定申告済み、
妻が子1人を扶養で年調済み(申告なし)ケースで、
夫に2人の扶養をまとめる(変更する)更正の請求
(および妻が確定申告)は認められないのですが、
では、夫・妻とに年調済み(申告なし)のケースで考えると、
どちらも当初申告がなく、修正申告もしくは更正の請求する
ことはありませんので、確定申告することによって
扶養の差替えをすることが可能です。

国税庁タックスアンサー No.1181
「納税者が2人以上いる場合の扶養控除の所属の変更」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1181.htm

さて、最後の判断に迷いやすい事例になりますが、
これは毎年本メルマガで注意喚起をしている内容です。

個人事業主の妻(または親族)で、給与の支払いを受けた
青色事業専従者は、その者の所得にかかわらず控除対象配偶者
(または控除対象扶養親族)にはなりません。

しかし、個人事業主の合計所得金額が48万円以下の場合、
事業主は専従者の控除対象配偶者(または親族の
控除対象扶養親族)に該当することになります。

給与を払っている側が、もらっている側の扶養に入る
というのは感覚的におかしいと感じるかもしれませんが、
法的に要件を満たしていることになります。

このことについて一部専門書などでは、
「一時的なことであれば」専従者が事業主を
控除対象配偶者(または親族の控除対象扶養親族)とできる
=連年であればすることはできない、というニュアンスで
説明していることもありますが、この「一時的なことであれば」
には根拠がないでしょう(つまり連年でも認められるはず)。

このように解説するのは、おそらく専従者給与が高く設定
されているから事業主の所得が低くなる(赤字になる)
のであって、本来であれば給与を支払う側の事業主が
配偶者控除・扶養控除の対象になることがおかしい
という論拠なのでしょうが、これは別問題でしょう。

青色専従者給与が不相当に高額か(必要経費に算入できるか)は
あくまでも「労務の対価として相当であると認められる金額」
かどうかで判定されるのであって、扶養関係が入れ替わっている
事実をもって否認されるわけでないと考えます。

ここまで3回にわたり、扶養控除(と配偶者控除)について
かなり掘り下げて解説してきました。

所得税の専門書でも扶養控除の解説部分は少ないのですが、
体系的に理解できるように努めたつもりです。
ぜひ、今年の所得税確定申告で参考にしてください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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