改めて確認したい倒産防止共済の論点3つ
※2018年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「改めて確認したい倒産防止共済の論点3つ」です。
税理士が倒産防止共済の仲介をしていることも多いですが、
これに関するご相談&クレームがある会社からありました。
これをきっかけに今の税理士から当社に顧問を変更したいとのことです。
ちなみに、私が同様のご相談を受けたことは3回目ですので、
みなさんの事務所で同じことが起きないように、
改めて、ここで確認致します。
是非、本情報を事務所内で共有してください。
1、別表10(6)※の添付
※ 社会保険診療報酬に係る損金算入、農地所有適格法人の
肉用牛の売却に係る所得又は連結所得の特別控除及び特定の基金
に対する負担金等の損金算入に関する明細書
租税特別措置法第66条の11(特定の基金に対する負担金等の
損金算入の特例)では、下記と記されています。
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法人が、各事業年度において、長期間にわたつて使用され、
又は運用される基金又は信託財産に係る負担金又は掛金で
次に掲げるものを支出した場合には、その支出した金額は、
当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
二 独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済法の
規定による中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための
同法第二条第二項に規定する共済契約に係る掛金
2 前項の規定は、確定申告書等に同項に規定する金額の損金算入に
関する明細書の添付がない場合には、適用しない。
ただし、当該添付がない確定申告書等の提出があつた場合においても、
その添付がなかつたことにつき税務署長がやむを得ない事情があると
認める場合において、当該明細書の提出があつたときは、この限りでない。
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宥恕規定はともかくとして、
確定申告書等※に「損金算入に関する明細書の添付」が無い場合は、
損金不算入である旨が書かれています。
※ 法人税法第二条第三十号に規定する【中間申告書】で
同法第七十二条第一項各号に掲げる事項を記載したもの
及び同法第百四十四条の四第一項各号又は第二項各号に掲げる事項を
記載したもの並びに同法第二条第三十一号に規定する【確定申告書】
だから、別表10(6)の添付は「損金算入のための要件」なのです。
これが否認された実例も2例知っています。
また、第1項において「その支出した金額は、
当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する」とあります。
だから、損金経理は要件ではないので、過去の掛金総額が分かるように、
貸借対照表に資産計上し、別表減算している事務所もあります。
しかし、個人的にはこれはお奨めしません。
なぜならば、別表減算を忘れ、かつ、別表10(6)の添付も忘れた場合、
更正の請求の対象にならないからです。
最悪、別表10(6)の添付ミスをしたとしても、
間違ってはいますが、損金経理をしておけば、
税務調査等で指摘されない限り、損金にはなっています。
だから、私は資産計上&別表減算はお奨めしないのです。
過去の掛金総額は「中小企業倒産防止共済掛金納付状況のお知らせ」で
知ることができます。
ちなみに、中小機構のホームページを見ると、
次のとおり、記載されています。
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平成29年「中小企業倒産防止共済掛金納付状況のお知らせ」は、
平成30年2月16日から順次発送いたします。
本通知には、平成29年12月末における払い込んだ掛金の残額と、
平成29年の月ごとの払込状況が記載されています。
「中小企業倒産防止共済掛金納付状況のお知らせ」の再発行は、
コールセンターへご連絡ください。
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だから、これを毎期チェックすればいいのです。
2、掛金総額の上限は800万円
基本的なことですが、決算前のミーティングで上限800万円まで、
あといくらで達するかを確認しなければなりません。
なぜならば、期末で年払いする場合、
その上限までの金額までしか当期の損金にならないからです。
これも私が下記メーリングリストで注意喚起したことにより、
事前に確認され、事なきを得た税理士がいるので、
みなさんの事務所でも必ず確認するようにしてください。
http://mmct.jcity.com/?c=7038&e=PsbfSqM8AtKPs0z_ibXzuw11
3、掛金を前納(一括納付)する場合
前納機関が1年以内の掛金は支払った期の損金となります。
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措置法通達66の11-3(中小企業倒産防止共済事業の前払掛金)
中小企業倒産防止共済法の規定による共済契約を締結した法人が
独立行政法人中小企業基盤整備機構に前納した共済契約に係る掛金は、
前納の期間が1年以内であるものを除き、措置法第66条の11第1項第2号
に掲げる掛金に該当しない。
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しかし、掛金を前納(一括納付)するためには、
【前納の都度】、掛金前納申出書を中小機構に提出しなければなりません。
中小機構のホームページには次のとおり記載されていますので、
「毎月5日」という期限を覚えておいてください。
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5日(土曜・日曜・祝日の場合は翌営業日)までに
中小機構に書類が届けば、同月に引き落としとなります。
中小機構への書類の到着が前納を希望する月の6日を過ぎた場合には
前納できません。
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毎年のことなので、一度手続きしたら、
来期以降も自動的に年払いになるといいのですが、
生命保険料とは違い、そうはならないのです。
これを失念すると、月払いになってしまうのです。
もちろん、お客様のところにもこの前納に関するお知らせは
郵送されているのですが、これを見落としているケースもあります。
そして、税理士が倒産防止共済の仲介をしていれば、
「先生のところを経由して入ったのだから、教えてくれればいいのに」
「先生が教えてくれないから、月払いになってしまった」
というクレームに至るのです。
このクレームがきっかけとなり、
顧問税理士を当社に変更されたお客様が2社あります。
みなさんの事務所ではそういう事故が起きないように、
ご注意頂ければと思います。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。