教育資金一括贈与に関する相続税申告時の留意点
※2023年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
前回までは「特別受益と遺留分の関係」
を取り上げました。
今回のテーマは
「教育資金一括贈与に関する
相続税申告時の留意点」です。
教育資金一括贈与が
相続税申告実務において関係するのは
「贈与者死亡時における管理残高
の相続税課税」になります。
しかしながら・・・
教育資金一括贈与は、相続税申告実務では
それほど注意すべきものとして扱われて
いないように感じています。
その原因は多くのケースで課税される
ことがないためですが、私自身は
これまでの申告実務で課税される
ケースに遭遇したことはあります。
課税される場合、被相続人はそれなりの
課税財産を保有していることが多いため
増差額も大きくなる傾向にあります。
今回は、この論点を深掘りしたいと
思います。
平成25年度税制改正により新設された
教育資金一括贈与ですが、複数回改正が
入っております。
1.平成25年度税制改正(新設)
2.平成31年度税制改正(改正)
3.令和3年度税制改正(改正)
4.令和5年度税制改正(改正)
上記URLにおけるP4下段
をご確認ください。
(参考)
贈与者死亡時における
管理残高の相続税課税
という表があります。
この表が最も理解しやすい
かと思います。
ポイント1:拠出時期
(1)~H31.3.31
(2)H31.4.1~R3.3.31
(3)R3.4.1~R5.3.31
(4)R5.4.1~
表1行目「管理残高の相続税課税」
(1)課税なし
(2)死亡前3年以内の非課税
拠出分に限り課税あり
(3)課税あり
(4)課税あり
まずは、最初の判断です。
原則的には、課税ありとなれば
「みなし相続等」に該当している
ことになります。
お伝えしたいのは、
拠出時期により「課税あり」が原則
になっているという事実です。
ポイント2:例外事項
表2行目「23歳未満である場合等に該当」
こちらは、1行目で「課税あり」と
なった場合でも
以下3パターンのいずれかに
該当すれば「課税なし」になります。
(1)23歳未満である場合
(2)学校等に在学している場合
(3)教育訓練給付の支給対象となる
教育訓練を受けている場合
つまり・・・
原則として、表1行目で「課税あり」
となる以下の拠出時期であっても
「課税されない」ことを意味します。
(2)H31.4.1~R3.3.31
(3)R3.4.1~R5.3.31
(4)R5.4.1~
受贈者のほとんどが上記例外に
該当することになりますので、
ほとんどの場合で表2行目
「課税なし」に行き着くと
いう感じです。
ただし、原則として
表1行目「課税あり」
の拠出時期の場合には、必ず
表2行目の例外3パターンに該当している
かを検証する必要があります。
この点が盲目的になりやすい
ポイントと言えます。
また、課税された場合でも
あっても、受贈者が孫であれば
拠出時期によって、2割加算
となるかが異なります。
(3)R3.4.1~R5.3.31
(4)R5.4.1~
これらの拠出時期であれば、
2割加算の対象となりますので
注意が必要です。
(参照:表3行目)
ポイント3:例外の例外
令和5年度税制改正により
表2行目「23歳未満である場合等に該当」
にさらに例外が生じました。
つまり・・・
「23歳未満である場合等に該当」
した場合であっても、
贈与者である被相続人の相続税の
課税価格の合計額が5億円超
である場合には、
表2行目「課税あり」
かつ
表3行目「2割加算あり」
となります。
考え方の整理として、
何が原則で、何が例外なのか、を
しっかりと確認する必要があります。
「拠出時期」を確認することは
相続税申告実務で必須であると考えます。
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