時効は本当に成立しているのか!?
※2016年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
ここのところ、立て続けに「時効」に関する
相談・質問が入ってきています。
重なるときは重なるものですね・・・
実際にあった税務調査の事案を
簡素化して取り上げてみたいと思います。
・10年前の売掛金を直近期で貸倒損失として計上
・税務調査で督促の事実などを確認された
(債権放棄などの手続きは行っていない)
・調査官は「商事債権の時効は2年なので、
8年前の貸倒損失となり税務上の時効」と否認指摘
さて、税務調査でよくあるこの否認指摘は、
本当に正しいのでしょうか?
まずは貸倒損失の計上要件を概観してみましょう。
(1)債権債務が後で存在しなくなった
(債権放棄・時効・再生法などで法的に切り捨てなど)
⇒ そもそも債権債務が存在しなくなったので、
無条件に貸倒損失として計上できる
(2)債権債務は法的には存在する
⇒ 実質的に払ってくれない等の場合、
税務上は9−6−3などの通達を適用して
貸倒損失として認められることもある
の2パターンに分けることができます。
上記の調査事案で、調査官は(1)が8年前に
起きているから、8年前の貸倒損失であり、
税務上の時効なので否認と言っています。
しかし、これは2つの意味で間違っています。
まず調査官は「商事債権は2年で時効を迎える」
と認識しているようですが、時効の効力というのは
「時効の援用」があって初めて成立します。
逆にいえば、時効の援用もないのに時効は成立しません。
時効というのは、時効の利益を受ける者(債務者)が、
時効であることを主張する(時効を援用する)ことに
よって成立するものです。ですから、時効期間が
過ぎたからといって債権が消滅するわけではありません。
時効期間を過ぎたら無条件に債権がなくなると
認識している点、時効の援用を確認していない点で
この調査官は時効の意味を理解していません。
もう1つの誤りは、「商事債権は2年で時効」
としている点です。
商事債権と一言でいっても、時効の年数は
その種類によって相違します。もちろん2年の場合も
ありますし、そうでない場合もあります。
時効の援用の解説も含めて、こちらのサイトは
非常にわかりやすく表記されています。
http://www.yaruzo-saiban.com/jikou.html
調査官は自分に有利な場合のみ、安易に
時効を持ち出してきて否認指摘します。
「商事債権は2年で(無条件に)時効を迎える」
ということが本当なのであれば、回収できない期間が
2年を超えた債権は、通達の要件など関係なく、
無条件に貸倒損失として計上できるはずですが、
実際にはそうならないからこそ通達が存在するわけです。
この事実を知っておけば、時効がわかっていない
調査官に対して簡単に反論することができます。
ぜひ、時効の成立要件は知っておいてください。
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