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2016.05.19

更正があるべきことを予知してなされた修正申告か?

※204年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

さて、今回は「更正があるべきことを予知してなされた修正申告か?」ですが、

平成23年5月11日の裁決を取り上げます。

まずは、この事案の前提条件です。

○ 解体工事業を営む同族会社

○ 請求人の専務Aは元事務員による給与支給額の水増しを把握し、税務署に

  事前説明に赴いた

○ これを契機として、事前の電話連絡をした上で税務調査が行われ、

  修正申告に至った

○ 水増しの金額の合計額は34,488,800円

○ 重加算税が賦課決定された

争点は「この修正申告書の提出が『調査があったことにより当該国税について

更正があるべきことを予知してされたものでないとき』に該当するか?」です。

そして、国税不服審判所は下記と判断しました。

○ 法令解釈

通則法第65条第5項の趣旨は、過少申告がなされた場合には修正申告書の

提出があったときでも原則として過少申告加算税は賦課されるものであるが、

「申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正が

あるべきことを予知」することなく自発的に修正申告を決意し、修正申告書を

提出した者に対しては、例外的に過少申告加算税を賦課しないこととし、

もって納税者の自発的な修正申告を歓迎し、これを奨励することを目的とする

ものというべきである。

そして、同項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでない

とき」とは、納税者が申告書の提出後、何らかの事由によって、先に申告した

金額が過少であり、これを是正するためには修正申告書を提出しなければ

ならないことを認識し、これを決意したとしても、その決意は単に内心に

とどまるものでは足りず、客観的に認められるものでなければならないと

解するのが相当である。

○ 専務Aは、少なくとも税務署で面談職員らに事前説明した平成21年

10月19日頃までには本件水増しの全てを把握し、修正申告をする決意をし、

事前説明の際には、面談職員らに対して、本件水増しについて説明した上、

調査を求め、それに基づいて同月22日に本件調査が行われたものと認められ

るから、請求人は、自発的に修正申告書を提出する決意を有しており、その

請求人の修正申告の決意は、専務Aの面談職員らに対する事前説明において、

客観的に明らかになったものということができる。

そうすると、本件修正申告書の提出は、申告漏れの事実について自発的にした

ものであり、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされた

修正申告書の提出には当たらない。

○ 原処分庁は、本件修正申告書は、調査担当職員が本件調査において、

元事務員に質問して本件水増しを確認した結果判明した横領の事実に基づき

提出されたものである旨主張する。

しかしながら、請求人においては、本件水増しについて事前説明をする前には

既に全ぼうを把握していたと認められるところ、専務Aから事前説明がある

までは、本件水増しにつながるような資料は有しておらず、請求人に対する

調査を行う予定はなかった上で、本件調査は実施されたものの、専務Aが把握

していた本件水増しの金額が、本件修正申告における本件水増しの金額の

合計額とほぼ一致しており、本件調査後の修正申告の慫慂において本件水増し

以外に新たに明らかになった事実はなかったものと認められることからすれば、

本件修正申告書については、本件調査において本件水増しを確認した結果

判明した横領の事実に基づいて提出したものということはできず、むしろ、

面談職員らが、相当長期間にわたって従業員の給料水増しが行われていたと

想定された旨答述していることからすれば、面談職員らも、請求人において、

本件調査の前に本件水増しの事実を把握していたことを認識し、修正申告を

する意思を持って事前説明に来たことも認識し得たというべきである。

○ 本件修正申告書の提出には通則法第65条第5項の規定が適用され、

同条第1項の規定は適用されないから、過少申告加算税は課されない。

○ 通則法第68条第1項は、同法第65条第1項の規定に該当しない場合

には適用されないから、請求人の主張について判断するまでもなく、本件

各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分は違法である。

 

いかがでしょうか?

重大な非違項目が事前に発見されることはありますし、その場合に事前相談に

行くケースもあります。

こういう場合、国税通則法68条(重加算税)では「第六十五条第一項(過少

申告加算税)の規定に該当する場合(同条第五項の規定の適用がある場合を

除く。)において」となっていることから、「更正があるべきことを予知して

されたものでないとき」ならば、重加算税は課されません。

重加算税はあくまでも過少申告加算税が課される場合で、隠ぺいや仮装が

あった場合に課されるものなのです。

結果として、大切なことは

○ 事前通知を受けた後に自主的に修正申告する

○ 臨場調査が始まり、その途中で指摘を受けていない項目につき、自主的に

  修正申告する

ということを検討することなのです。

それが過少申告加算税も重加算税も回避する方法なのです。

 

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