更正の請求か当期の損失計上か?
※2020年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回から引続き、更正の請求の注意点ですが、
そもそも更正の請求することが正しいのか、
当期の損失として「過年度損益修正損」として
処理していいのか迷うことも多いかと思います。
実際のところ、税理士・会計事務所の言い分
としては「更正の請求をするのが面倒だから
当期で処理したい」という本音があるとは
思っていますが・・・
例えば、過去の会計・申告を見直したところ、
誤って売上が二重計上されていた場合、
過年分の是正が必要となることから、
更正の請求をすることになり、当期の損失
にはなりません。
一方で、過去の売上について、契約の解除や
取消等が発生した場合には、その契約解除等
による損失の額は、前期損益修正損として
損金算入が認められています
(法基通2-2-16)。
これはいわゆる「後発事象」があった場合で、
契約解除や値引きなどが当期に発生したことから
当期で確定した損失になると理解できます。
現実的に考えると、税務上は当期の損失に
なるケースはかなり少なく、更正の請求が
正しいケースがほとんどでしょう。
本来であれば、更正の請求をすべきところを
過年度損益修正損として処理した場合の
【リスク】ですが「期ズレ・時効」でしょう。
5期前に計上した過年度損益修正損が、
本来は更正の請求により過年度是正が必要
であったとして指摘された場合、
該当年分で修正申告をしたうえでも、
期ズレ分(6期以上前)は時効によって
更正の請求ができないことになります。
※ただし5年超であっても法人税法第80条の2
の適用によって修正申告から2ヵ月以内に限り
更正の請求ができる特例もあります
特損に計上した項目もしくはその金額が多額
である場合、税務署から着目されやすい
(調査選定されやすい)わけですが、
「過年度損益修正損」は期ズレであることが
多いと調査官もわかっていますので、
この観点からも安易に(更正の請求が面倒と
いう理由で)当期処理しない方がいいでしょう。
なお、国税庁のサイトにおいて、誤り等を
是正する場合の指針が出されていますので、
併せて下記を確認すべきでしょう。
「法人が「会計上の変更及び誤謬の訂正に
関する会計基準」を適用した場合の
税務処理について(情報)」
来週水曜も引続き、更正の請求における
実務的な論点を解説していきます。
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