更正の請求は再調査の要件に該当するリスクが高い
※2023年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
税務調査は、すでに実施された年・事業年分において
再度実施されないのが原則となっており、再度実施する場合、
いわゆる「再調査」の要件を満たしている必要があります。
再調査の法的・通達要件など詳細を知りたい方は
下記の記事(後半部分)をお読みください。
再調査の要件である「新たに得られた情報」とは、
通達等を見てもかなり漠然とした定義・概念ではありますが、
一般的には税務署が調査後に得た「資料せん」などが
これに該当すると考えられます。一方で、修正申告の提出など
調査が結了した後に提出した更正の請求もまた
「新たに得られた情報」に該当すると判示した判決があります。
令和4年4月15日東京地裁(Z888-2412)
【判決のポイント】
当初調査に基づく期限後申告の後に行われた更正の請求において、
その請求書に添付された収支内訳書に申告額と大きく異なる
必要経費の額が記載され、当該金額を踏まえた更正の請求が
されたこと自体が、再調査の要件を定めた通則法74条の11
第6項の「新たに得られた情報」に当たると認められた事例
この裁判は、Amazonで中古DVD等を出品・販売する
個人事業主に調査が入り、結果として申告がなかった消費税について
期限後申告が提出され調査が結了しましたが、その2ヶ月後に
納税者が更正の請求(Amazonへの支払対価を仕入税額控除に計上)
を提出、さらにその2ヶ月後に再調査が実施されたものです
(再調査によって更正の請求が認められなかった)。
本裁判では、税務論点としてAmazonから受けた役務の提供が
国内か、という判断があるわけですが、もう1つの争点である
税務調査の手続き論「再調査の要件を満たしていたか?」
について、地裁は要件を満たしていたと判断しています。
このように、再調査の規定・要件を知っていると、
税務調査後になって更正の請求をすれば、少なくとも
実地調査は免れられる=電話・郵送等でのやり取りだけで、
更正の請求が通りやすいと思っている方も多いようです。
しかし、上記判決のように、税務調査によって判明していた
内容と相違・齟齬がある更正の請求を提出すると、
短期間であっても再調査になる可能性が高いのです。
さらにいうと、上記判決は令和4年5月に東京国税局内の
「判決速報(No.1608)」において管内税務署に
周知されている判決です。いかに重要で、かつ
調査官にも知られている判断内容かは推察できるはずです。
さて、実務上は調査結了年・年分において
(多額な)更正の請求をする典型例は、取引先の【破産】を
後になって知った場合でしょう。
取引先の破産による貸倒損失の計上は更正の請求ができる、
かつ【5年超の期間でもできる場合がある】ことを、
私が無料セミナーで話すのは9月1日(金)です。
https://kachiel-web.jp/lp/20230901_seminar/
上記のとおり、税務調査が実施された年・年分に対して
貸倒損失で更正の請求をした場合は、調査内で
判明していた「以外」の事項でしょうから、再調査になる
可能性が高いため、貸倒損失の計上要件・主張論拠を
ガチガチに固めたうえで更正の請求をすべきです。
再調査の要件を認識していただいたうえで、
ぜひ上記無料セミナーを受講していただければと思います。
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