書面添付の有効性
今回は「書面添付の有効性」です。
先日、現役の国税同期と会食してきました。
その話の中で出てきたのが書面添付です。
書面添付の有効性については、税理士サイドとして
様々な「憶測」が飛び交っているようです。
・結局実地調査に移行するなら意味がない
・税理士のリスクが大きい
・書面添付の内容を担当者が精査していない
今回のブログでは、「税務署が調査先を選定する」
という観点から書面添付を解説してみます。
まず「事実」ですが、税務調査先を選定する際に
KSK(国税総合管理システム)では、
書面添付の有無は選定事由に入っていません。
(書面添付の有無自体は入力されています)
つまり税務署の「システム上では」書面添付の有無で、
調査に入りやすい・入りにくいはありません。
そして、次の段階では統括官または調査官の選定に
移るのですが、この段階で書面添付があるものを
選びやすいのか、選びにくいのかということになります。
ここの結論は当然ですが「書面添付があれば
調査先として選定しにくい」となります。
理由はいくつか考えられますが、
・意見聴取が面倒
→意見聴取は基本的に統括官が行うものですが、
面倒で嫌がるのが事実です
・書面添付をしているくらいだから非違項目は少ないはず
→調査官としての経験則ですが、書面添付があれば
否認項目は少ない、つまり増差が見込めない
という大きく2つの理由があります。
(3人で飲んでいたのですが全員一致した意見でした)
ということは、この時点ですでに書面添付すればそれだけで
調査が入りにくいというのは事実ということがわかります。
これらの前提は、「書面添付割合が低い」ということです。
書面添付が30%も40%もされていれば、
書面添付の関係なく調査先に選定するかもしれません。
さて、ここで面白いのは、書面添付の有無だけで
これだけの影響があるということであって、
記載内容・量は関係ないということです。
もちろん記載内容がきちんとしているかは、
意見聴取をすることになれば精査するのですが、
調査先の選定段階ではパラッとしか見ていません。
問題は、書面添付をしているか、していないか
だけで調査の選定に影響するということです。
なお、私が国税にいた頃は「白紙」の書面添付が存在
していましたが、さすがに今はもう見かけないそうです。
現実として、意見聴取からの省略率は50%を超えています。
これは税務署側に書面添付の制度内容が浸透してきた
証拠であり、また意見聴取をして実地調査に移る場合には
なぜ調査に移行するのか、税務署側がきちんと税理士に
伝えなければならない、とするルールが
徹底され始めているからなのです。
調査の手続きに関する法律も整備され、
税務署側が手続きを厳格化し始めた今だからこそ、
書面添付を検討すべきかと思います。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
2013年6月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。