書面添付の目的
今回のメルマガでは「書面添付の目的」について。
書面添付制度は、そもそも何のために作られた制度かご存知ですか?
書面添付制度の内容をよく知っている方でも、
あまり制度の目的までは知らない方が多いようです。
書面添付制度は、国税・税理士双方にメリットがあるように作られた制度です。
「新書面添付制度について(33条の2の書面及び35条の意見聴取)」
http://www.nta.go.jp/sonota/zeirishi/zeirishiseido/kentokai/02.htm
この国税庁ホームページに明記されているとおり、
書面添付制度は、税理士側にしてみると
「税理士の社会的信用・地位の一層の向上」が目的です。
書面添付は税理士にしかできない行為であって、
かつ、意見聴取によって実地調査が省略となれば、納税者にとっても
まさに税理士を顧問にする意味があるというものです。
では、国税側の目的(狙い)は何でしょうか?
これは書面添付による「実地調査率の向上」です。
去年の3月に公表された「最近の税務行政の動向」でも、
http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/shingi-kenkyu/shingikai/110303/shiryo/pdf/04.pdf
(表示できないない場合は、URLをコピーして直接アクセスして下さい)
6ページに「実調率の低下」と題して、
4%台に低迷する実地調査率を自ら問題視しています。
これは25年に1回しか税務調査ができていないという異常事態です。
そこで考え出されたのが書面添付制度。
実地調査率を向上させるためには「調査官の数を増やす」か
「調査日数を減らす」かしかないと考えられていましたが、
税理士が納税者に対して厳しく監査するようになれば
税務調査に行く件数を減らすことができる、という方向転換です。
ではなぜ、書面添付で実地調査率が向上するのでしょうか?
結局意見聴取後に実地調査に移行するなら
ただお互いの労力が増えるだけではないでしょうか?
ここがこの制度のカラクリなのですが、
「意見聴取して調査省略」でも1件の実地調査数とカウントしているのです。
ちなみに法律上と実務は乖離しています。
つまり、法律上「意見聴取=税理士法の制度」なので実地調査ではありません。
実際に意見聴取の段階で納税者の立会いはできませんし、
意見聴取する調査官や統括官に質問検査権は存在しません。
しかし、「意見聴取して省略」でも1件の実地調査数とカウントすることで、
税務署はノルマである実地調査数を確保することができるのです。
書面添付の目的がわかれば、国税が求めていることがわかります。
税理士としては、書面添付をして、
意見聴取から省略に持ち込むことができれば
税務調査が来ないという大きなメリットがあるのですから、
この制度を有効活用しない手はありません。
※2012年1月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
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