期ズレと重加算税
こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。
さて、今回は「期ズレと重加算税」です。
利益が出ている会社の場合、外部業者に「期末までに納品して欲しい」、
「請求書も期末までに発行して欲しい」という要望を出すことがあります。
しかし、結果として、全部、または、一部が間に合わないこともありますが、
請求書の日付は今期中であり、結果として、今期の損金に計上されている
場合もあります。
これにつき、重加算税との指摘を受けながらも、納税者の主張が認められた
裁決(平成25年7月12日)があるので、ご紹介します。
この事例は屋根の修繕工事の一部の納品、OA機器の納品等が翌期であった
にも関わらず、今期に経理処理されており、また、請求書の日付が今期中で
あったことから、「相手方との通謀」を理由に重加算税の賦課決定された
ものです。
しかし、国税不服審判所は下記と判断し、原処分庁の主張を退けたのでした。
(屋根の修繕工事について)
○本件各工場工事が全体としてそれぞれ納入予定日までに完了していなかった
としても、本件製缶工場屋根工事は平成22年3月末までに、本件加工工場
屋根工事は平成23年3月末までにそれぞれ実態としては完了していたこと
を併せ考えると、不自然な点は認められない。
○請求人は、本件各工場請求書が発行されたことにより本件各事業年度に
おいて、本件各工場工事の修繕費用をそれぞれ各事業年度の修繕費に計上し
損金の額に算入したことが認められるが、本件製缶工場屋根工事は平成
22年4月に、本件加工工場屋根工事は平成23年4月にそれぞれ完了し、
請求日の翌月にそれぞれ支払をしていること、本件各工場請求書に
工事完了日を示すなどの記載がないこと等これらの事実のみからは、
請求人には、それらの計上に際し、事実を隠ぺいした、又は事実を仮装した
と評価すべき行為は認められない。
○請求人は、本件各事業年度の3月末時点において、本件各工場工事の
主要部分である屋根工事は完成していたことから、本件各工場工事は既に
完成していたと認識し、当該認識のもと、本件各工場請求書に基づき、
本件各工場工事の修繕費用を修繕費として計上し、損金の額に算入した
とみるのが自然である。
○請求人とJ社とが通謀していることを証する具体的な証拠はなく、また、
本件各工場請求書のいずれにも本件各工場工事の完了日を示す記載がない
ことから、当該請求書は単なる工事代金の支払を求める書面と評価せざる
を得ず、虚偽の証ひょう書類の作成及び帳簿書類の虚偽記載があったとは
認められない。したがって、原処分庁の主張には理由がない。
(OA機器の納品について)
○本件OA機器請求書が発行された経緯については、年度内での納品について
請求人側からの依頼があったと認められるが、本件OA機器請求書の発行
についてその依頼の事実についての可能性は否定できないものの、請求人
と納品業者の担当者Aとが通謀した事実はもちろん、請求人側の誰がいつ
Aにどのような依頼を行ったかの事実を推認する証拠は、Aが記載した書類
以外には見受けられない。
○本件OA機器等は、平成23年3月末までに納品されることが予定されて
いたことからすれば、仮に本件OA機器請求書の発行について請求人が
事前に依頼を行ったとしてもあながち不自然ではない。
○本件OA機器請求書には、発行日及び支払約束日の記載はあるものの
本件OA機器等が納品されたことを示す日付等の記載はなく、本件OA
機器等は同年5月には納品され、代金も支払われている。
○以上のことから、請求人の本件OA機器等の設置費用の計上について、
事実の隠ぺい又は仮装の行為があったとの認定はできない。
○請求人の改ざんによる虚偽記載の事実についての可能性は否定できない
ものの、請求人の押印の行為は、Aの営業成績向上のための協力に
過ぎないと推認するのが相当である。
○請求人に通謀による虚偽の証ひょう類の作成があったとは認められず、
原処分庁の主張には理由がない。
いかがでしょうか?
税務調査の最終交渉段階を迎えている会社も多い時期ですが、重加算税は
どこまでいっても、隠ぺい、仮装が前提であり、これを満たさない限り、
賦課決定はされません。
しかし、課税庁は隠ぺいや仮装「的」な行為があれば、これを理由として、
重加算税を課してくることもありますが、その全てが取り消されることも
よくあるのです。
本件のような事例はよくあるでしょうし、重加算税を賦課され、そのままで
終わっているケースも多いかと思いますので、覚えておいて頂ければと
思います。
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※2014年5月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。