根拠を先に出させる
税務調査では調査官の否認指摘の「根拠」が
非常に曖昧であることが多くあります。
税理士としては調査官の言っていることに
確かに納得はできるのだけど・・・じゃあ具体的に
何をもって否認するの?という状況です。
昨日開催した税務調査対策研究会の中でも議論になったのですが、
例えば「土地と建物の区分」の問題があります。
1億円で土地と建物を合わせて購入したのですが、
明確な区分がない場合、減価償却のためにも
消費税のためにも、建物の金額を大きくしたいと考えます。
かなりの極論ですが、
建物部分:1億円
土地部分:0円
と区分した場合、調査官は間違いなく否認指摘します。
「この金額区分は合理的ではありません!」と。
確かに合理的ではありません。明らかにおかしいです。
減価償却費を大きくし、消費税を減らすために
建物部分を大きくしたと考えるのが普通です。
(逆に、建物が0円なら否認指摘しないでしょう)
しかし、第三者と不動産を売買し、
「建物部分:1億円・土地部分:0円」の契約書があれば、
何をもって否認するのか、という話になります。
この例はあくまでも極論であって、
合理的に区分すべきだという前提に立てば、
土地の時価を評価して、全体の売買金額から
土地部分を差し引いて建物価額を算出するのでしょう。
しかしこれでも明確に否認するための根拠条文はありません。
行為計算否認も適用できません。
税務調査ではよく、調査官が感覚で否認指摘するのですが、
すべての否認指摘においてまず、
否認する根拠を調査官に明示させてください。
「おかしい」「合理的ではない」ではダメです。
どの法令・通達等をもっておかしいと言っているのかです。
この点を確認せず、調査官の否認指摘に対して
感覚的に反論してしまうので、水掛け論になるのです。
先に調査官に根拠を明示させれば、
その根拠に対して反論すればいいだけになります。
こうなれば
・違う法令や根拠で反論する
・法令・通達に対する解釈の相違で反論する
という明確な2つの選択肢に絞られるので対応も楽になるのです。
また税務調査の現場では、否認指摘の根拠を迫ったところ、
調査官が勝手に否認指摘自体を取り下げることもあります。
いかに適当な否認指摘をしているかです。
税務調査で否認指摘を受けたときは、
反論根拠を持っていても、あえて調査官に
「その否認根拠は何ですか?」と聞いてください。
自分から主張・反論を始めないことです。
このように対応するだけで税務調査で
不当な否認を受けることはなくなるのです。
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2012年10月当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。