2014.10.24

棚卸除外

今回のテーマは、『棚卸除外』です。

さて、年度末に一番多いのが「棚卸」を利用した脱税です。
書類の書き換えが簡単にできるため、罪の意識も薄いようですね。

しかし、在庫表を書き換えるということは、
「帳簿類の偽造」にあたりますので、重加算税の対象となります。

決算期末には、多くの企業が一斉に棚卸し行います。
期末棚卸資産の金額を出して決算を組むことになります。

この期末棚卸資産の金額が、減れば減るだけ売上原価として
損金に落ちる金額が増えるため、所得も減ることになります。

取引先と通謀する必要がなく、期末の実地棚卸金額を
内部的に減らしておけば良いだけなので、簡単に出来てしまうのです。

棚卸金額を減らすいわゆる『棚卸除外』には、皆さんご存じとは思いますが単価を下げる方法か数量を減らす方法の2つしかしありません。

棚卸資産を台帳により、仕入、売上、在庫の単価、数量を継続的に
記帳している会社では、帳簿上の棚卸資産金額が算出されます。

これと実地棚卸資産金額とが比較され、軽微なものについては
棚卸減耗損として損金に落とすことができます。

ところが棚卸など年に一回しか行わない企業が多く
帳簿の提出を促しても、出てくる数字は年度末だけのものです。

莫大な数量に及ぶ仕入数量、販売数量がある場合は、
全部をチェックするのも時間的にかなり難しいでしょう。

こういったケースではどうしてきたのか?

数字的に見ておかしいと思われる商品を1点、2点に絞って
仕入数量、販売数量をひたらす照らし合わせいきます。

ここで間違いがなければ、全体でも棚卸除外はないだろうと判断します。

製造業や建設業などの棚卸を調査するには、
特に専門的な知識を必要とされます。

完成品や材料だけでなく、製造中のモノもあるからです。

これら製造途中のモノは「仕掛品」と呼び、正確な価値を算出するには
業界特有の計算方法などの難しい知識を知り得なければなりません。

仕掛品の評価を低く見積もり脱税するのが、これら業種の特有ケースです。

中古車や宝石の販売などの仕入れてきたモノを整えて売るという
商品原価と売値が紐づいたビジネスモデルは調査も簡単です。

しかし、ネジなどの”ある商品の中のひとつの部品”などの場合、
これが2年前に製造されたネジかどうかなど立証することは不可能です。

こうなると調査官もお手上げなってしまいます。
「棚卸除外」を発見することは、税務調査の中でも実は難しいのです。

また、評価損計上の問題で税務署と争うケースも多いようです。

以前の仕入が売れ残った商品などは、その価値が半減してしまうので
商品評価損を計上したいと考える方も多いでしょう。

商品の評価方法として「低価法」を採用して、商品の時価が客観的に
求められるものでなければ、「商品低価評価損」の計上は非常に困難です。

「原価法」を採用している場合では、著しい陳腐化をしていなければなりません。

「著しい陳腐化」というのは、棚卸資産そのものには損傷、品質低下等の物質的な欠陥がないにも関わらず、型式、性能等の優れた新製品が発売されたなど経済的な環境の条件の変化に伴い、その価値が著しく減少し、今後回復しないと認められる状態にある場合に解釈されるものです。

調査官もいろいろな見解をもっていますので、よく話し合う必要があるでしょう。

一度、ごまかした数字は何年もついてまわることになります。
数字はやがてツジツマが合わなくなり、調査官に見破られることとなります。

繰り返しになりますが、仮装隠ぺい行為は重加算税の対象となります。
『棚卸除外』は安易に考えてはいけません。

 

※2010年3月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。

また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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