歳入庁としての国税の役割
今回のテーマは、『歳入庁としての国税の役割』です。
8月11日の日経新聞朝刊1面でこのような記事が出ました。
「年金保険料 悪質滞納、国税庁が徴収」
国民年金保険料の悪質な滞納者については、
厚生労働省が国税庁に強制徴収を委任するとの記事。
今回発表された方針では、所得が1,000万円以上あるにもかかわらず
保険料を2年以上滞納している加入者を対象に絞っています。
人数的には400人程度のようですね。
かなり前から国税庁の役割については議論されてきました。
私が国税に入った2001年当時でも、
①社会保険庁の徴収業務を国税庁で統合
②国税庁の組織を大きく賦課と徴収の2部門制にする
③それに合わせて職員数を増やす
という方向性があたかも決定しているかのように言われていました。
ここ数年の間に、国税専門官の採用人数を急激に増やしてきた
国税庁の組織ですが、それでもまだ56,000人の組織。
以前は57,000人前後で推移してきた職員数から考えても、
社会保険庁の業務を引き受けるどころではないのが現実でしょう。
法人数が増え、さらに副業などで確定申告しなければならない
個人が増えることで税務調査の対象件数が急増している昨今。
調査官の人数を増やすことと、徴収官の人数を増やすという
同時進行はさすがに無理があります。
社会保険庁の業務を一部でも国税庁に移管し、
そのために徴収官を増やさなければならないとすると、
明らかに今後、調査官の人数は良くて現状維持のまま、
もしくは減る方向に動きます。
以前メルマガで実施調査率の低さに対する国税の危機感を
書きましたが、このままでは法人に対する実施調査率は
どう考えても5~6%程度で止まります。
つまり全法人でならすと20年に1回しか税務調査が
入らないということになります。
税務調査の対象件数が増えている中で、
調査官の人数が純減していたここ数年国税庁がとった方針は、
1税務調査にかける日数の縮減でした。
つまり税務調査の1件1件に時間をかけず、
調査をする数に対してノルマを厳しくしたのです。
e-Taxの普及などでどんなに国税庁内部の業務が効率化されても
税務調査は人が介在せざるをえない業務。
調査官の数が減るということは、そのまま
税務調査の数・割合が減るということでもあります。
以前からセミナーで、
「今後調査官の人数は増えるので、実施調査率も上がるし、
あっさり終わる税務調査も少なくなりますよ」
とお話ししてきましたが・・・
社会保険料の徴収業務委任の流れによっては、
しばらく実施調査率も低いままで、
税務調査にかける日数も短いままかもしれません。
※2010年8月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。