気安く承諾はしてはいけない?
今回のテーマは、前回から引き続きで『税務調査の国賠 -④-』です。
過去3回にわたって国賠について書いてきましたが、
今回でこのシリーズの最終回となります。
任意調査は”任意”であるが故に、調査官が調査対象者の物品・備品などを
勝手に触ることは許されません。
調査官が調査先の物品を触りたければ、また備品等を開けて見たいであれば、
調査対象者の「承諾」が必要になります。
通常の税務調査においては、調査官が
「その書類を見てもいいですか?」
「その棚を開けてもらっていいですか?」
「机の引出しを開けてもらっていいですか?」
と依頼し、それに対応するものです。
しかし、料調(リョウチョウ・資料調査課)の調査(あくまでも任意)においては
特に、任意調査として許容される範囲を超えた調査が行われることがあり、
これに関する国賠裁判が後を絶ちません。
さて、ここで問題となるのが、上記「承諾」とは何なのか?です。
承諾する人は過去の裁判例からも、納税義務者本人のみならず、
その業務に従事する家族・従業員等を含むものと解せられています。
つまり無予告調査に入られて経営者がいない場合でも、
従業員が調査官の言うことにOKを出してしまえば、
それは「承諾」として取り扱われるため、
税務調査の違法性を問うことはできません。
また「承諾」とは通常、「明示の承諾」が必要になります。
つまり調査対象者が「いいですよ」と明言することです。
では調査官の依頼に対して、「何ら拒否せず」に言われるがままに
その指示に従った場合は承諾したことになるのでしょうか?
このような態度は「黙示の承諾」と解せられ、
判定基準としては非常に曖昧で困難ではありますが、
「承諾」の範囲内と看做されることがあります。
以上から大事なことは、無予告調査や料調調査においては、
①経営者だけではなく従業員等にも、税務調査において
気易く「承諾」をしないことをきちんと事前に伝えておくこと
※多くの納税者は、税務調査を捜査と勘違い
していることがほとんどだと思います
②調査官の依頼に対して、「黙示の承諾」にならないよう、
明確な発言・回答をすること
この2つを守れば、調査官が任意調査の範囲を
超えたかどうかが明確になります。
※2011年2月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
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