汎用的法律規定:税務調査は犯罪捜査ではない
※2021年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、今回は
「税務調査は犯罪捜査ではない」と規定されている
内容について解説します。
先週金曜の本メルマガでは、職業上の守秘義務があっても
税務調査で受忍義務がある一方、調査官の質問検査権にも
範囲があり、「売上・所得・税額」を把握できる
範囲にとどまる(はず)と解説しました。
この考え方の論拠になっている条文として
下記が挙げられます。
国税通則法第74条の8(権限の解釈)
第74条の2から前条まで(当該職員の質問検査権等)
の規定による当該職員の権限は、犯罪捜査のために
認められたものと解してはならない。
たとえば以前、「社長・営業マンのメールをすべて
一括ダウンロードし、データで提出してください」
と調査官に要請されたが、どのように対応すべきか、
質問・相談を受けたことがあります。
この調査事案は不動産売買の会社が対象で、
売上の計上時期について多数の疑義がありました
(売買契約書だけでは時期が明確にならない)。
だからといって、すべてのメールを一括提出というのは
間違いなく粗い(荒い)やり方であることから、
上記の法律規定を根拠に反論してもらいました。
税務調査とはそもそも、「この売上は○○ですか?」
「この経費は××ですか?」など、特定の取引に関して
調査官が質問し、それに対して回答するなどの
受忍義務があるわけです。
一方で、すべてのメール履歴を提出しろなど、
「叩けば何かホコリが出るだろう」は、
まさに【犯罪捜査】であって、上記法律規定から
税務調査の範囲を逸脱していると解釈できます。
この「犯罪捜査」という規定には法令解釈通達が
ありませんが、税務調査とは被調査者を犯人だと
みなして証拠収集することではない、ということです。
来週から本メルマガで取り上げる、税務調査の手続き
ですが、これらは明確な法令等の規定があることから、
それらに違反している場合、調査官に対して
税務調査の違法性を問うことができます。
しかし、調査手続きに明記されていない調査官の
行為のなかで、さすがに「度が過ぎているな」
と感じる言動については、「税務調査は
犯罪捜査ではありません」が有効な主張です。
・キャビネや引き出しを勝手に開けられる
・不要な反面調査に行かれて取引先の信用を失う
・パソコンからデータを抜かれる
などが該当する調査官の行為になるでしょう。
国税通則法第74条の8は税務調査において
汎用的に主張できる根拠なので
ぜひ覚えておいてください。
来週金曜の本メルマガから、税務調査の手続きに
関してシリーズで解説していきます。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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