法人の調査選定に個人時代の重加算税はどこまで影響するか?
※2020年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
法人が税務調査に入られる要因を考えるうえで、
よく気になる事項として「個人時代の重加算税が
どこまで影響するのか?」が挙げられます。
個人事業主から法人成りしたケースで、
かつ個人事業主時代の税務調査で
重加算税が課された事績がある場合です。
まず前提として、税務署内では原則として、
法人課税部門の調査官が個人課税部門の情報を
KSKなどで閲覧することはできません。
ですから、法人課税部門の調査官が
個人事業主時代の情報(決算書のみならず
重加算税の課税事績など)を知りたければ、
個人課税部門に「照会をかける」
というプロセスを経る必要があります。
この「照会をかける」という行為ですが、
同じ税務署内であれば、正式な承認などを
経ることなく他部門に行くことで聞く、
もしくは閲覧することは簡単にできます。
ただ、管轄外の税務署である場合は
正式な照会手続きを要するなど、
かなり面倒なプロセスが必要になります。
(もちろん照会する税務署に知り合いが
いれば電話などで聞くことは容易です)。
また、論点は変わりますが、法人の決算書等
だけの情報で、法人成りなのかどうか
見分けがつくかどうかで前提が相違しますので、
ケースに分けて考えてみましょう。
(1)調査官が法人成りと気付かない場合
個人事業主時代の情報は確認しないので、
重加算税の課税事績は選定に関係しない
(2)調査官が法人成りだと認識した場合
個人課税部門に照会をかけて、課税事績を
確認することがあり得る
⇒
ただし、実務上面倒であることが多いため、
照会までしないことが多い
⇒
照会しても、法人成り特有の課税論点
(資産の引継ぎなど)だけであることが多い
以上から、個人事業主時代の重加算税が
法人成り後の調査選定に大きく影響する
ケースはかなり少ないはずです。
少なくとも、法人課税部門で
複数の調査選定をしている「中から」、
個人事業主時代の課税事績を確認する
ということは、そもそも法人課税部門で
いったんは調査選定されているわけです。
個人事業主時代の重加算税の課税事績から
法人調査が選定されているわけではない以上、
確率は低いと判断できるでしょう。
また、上記(1)よりも(2)の方が
個人事業主時代の事績が調査要因に
なりにくいことから、個人事業主時代に
重加算税が課された者が法人成りする場合、
法人の設立届書には法人成りと
明記しない方がいいでしょう。
(「設立の形態」の1)
多くの税理士が気になる論点だと思います。
ぜひ参考にしてください。
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