法人会・優良申告法人に意味はある?
※2015年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
今回のブログは、ある税理士さんに「ぜひ書いて欲しい」
とお願いされた内容となっています。
ズバリ「法人会に加入していることや、優良申告法人
であれば、調査に入られにくい(選定されにくい)のか?」
という、率直な疑問に対する答えです。
まずは「法人会」。
法人会はご存知のとおり、税務署が「税務協力団体」
として取り扱っているものです。
法人会に加入している法人の場合、法人会から配布される
「シール」を申告書等に貼付することになっています。
では、このシールがあれば、税務調査に入られにくく
なるのでしょうか?
答えは、「なりません」。
そもそも、国税が使用するKSKの入力項目に、
「法人会」は存在しません。
つまり、申告書に法人会のシールが貼ってあっても、
税務署では法人会を別管理など全くしていないのです。
KSKのシステム選定上、法人会であろうと
その他の法人と全く同じように調査選定しています。
また、調査官の立場になってみても、申告書などに
法人会のシールを貼ってあるからといって、
調査選定に何の配慮もしないのが事実です。
あくまでも、法人会は国税全体からすれば確かに
協力団体かもしれませんが、調査官の立場からすれば
税務調査で何ら配慮する対象とは考えていない、
ということなのです。
「法人会のシールを貼って申告書を提出すれば・・・」
というものが、法人会の入会動機なのか、
営業トークなのかわかりませんが、実際の調査選定で
影響力ゼロであることは知っておくべきです。
※この都市伝説を信じている顧問先がいれば
教えてあげた方がいいかもしれません
次は、「優良申告法人」。
優良申告法人については、国税の内部通達では
「適正な申告・納税を行っている法人を広く育成する
ことが、税務行政の円滑な運営に寄与することから、
優良申告法人制度の適正な運用に努める。」
などと、非常に曖昧に記載されています。
(もっとも最近の内部規定は、
「平成27事務年度における課税部(部門)の事務運営に
当たり特に留意すべき事項について(指示)」
平成27年6月26日 国税庁長官 )
では、実際の調査選定はどうなっているのでしょうか?
優良申告法人の場合、KSKの項目となっています。
(その基準については、最後尾に記載)
優良申告法人というだけでKSK上、調査選定されにくいか
どうかは一概に言えませんが、間違いなく言えるのは、
優良申告法人の調査選定は、統括官だけが
行っているというのが事実だということです。
(一般の調査官は調査選定できません)
この事実からわかることは、(感覚論になりますが)
一般の法人よりは調査選定されにくいと思います。
もともと優良申告法人の数・割合は少ないとは言え、
統括官が選定する調査件数は非常に少ないからです。
また、優良申告法人であるということは、
それだけで厳しい基準を満たしていると
税務署は考えていますので、あえて
調査選定する意味もない、とも言えるでしょう。
ですから、優良申告法人であること、また
それを継続することには、意味はあるということです。
なお、最後になりますが、優良申告法人の
国税内基準を載せておきます。
=机上審査=
①所得金額が過去5年間の国税局管内の
有所得法人の平均申告所得金額以上
②表敬対象年度前5年間継続して青色申告
③継続的な期限内申告、完納
④7年以内の調査により法人の事業実態が
的確に把握され、かつ法人税について不正計算がなく、
各年度の申告漏れ割合が10%以下
=深度ある調査=
①法人税について調査年度における申告漏れ割合が
過去5年間に調査した申告漏れ割合の1/2以下(6.5%)、
かつ、増差所得金額の1/2以下(160万円)
②消費税、源泉所得税について各調査課税期間の
追徴税額が過去5年間に調査した1件当たりの
追徴税額の1/2以下(20万円)
③上記以外の国税についても不正計算及び多額な更正等がない
④追徴税額が期限内完納
⑤すべての取引が整然かつ明瞭に記録され、
帳簿および証拠書類が適切に整理・保存され、
事実関係や会計処理が速やかに確認できる。
⑥経理責任体制が確立されて内部牽制が
機能しているなど経理組織が整備されている
⑦企業会計と家計が明確に区分されており、
いわゆる公私混同がない
⑧不明朗な金融機関取引がない
⑨取引先など他の者の不正計算に加担または援助していない
⑩使途不明金がない
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。