法的三段論法で考える
先日、懇意にしている税理士と話していて、
税務における「法的三段論法」の話になりました。
そもそも三段論法とは、
①大前提:全ての人間は死すべきものである。
②小前提:ソクラテスは人間である。
③結論 : ゆえにソクラテスは死すべきものである。
という論理的推論の型式のひとつです。
難しい話はさておき、この考え方は
常に税務調査で採用しなければなりません。
私のところに来る税務調査の相談は、
メールを合わせると年間に数百件になりますが、
どこに問題があるのか税理士自身がわかっていない
ことの方が圧倒的に多いのです。
論点がわからなければ、問題解決などしようがありません。
たとえば、個人の医者に税務調査が入り、
調査官から接待交際費の全額を否認指摘受けました。
調査官はこう言ったのです。
「医者は接待される方でしょ?
患者を接待して来院してもらうってあり得ないですよね?
だから医者に接待交際費なんていう概念はないんです!」
では、こういうのはどうでしょうか。
同じく医者に税務調査が入りました。
調査官から接待交際費の全額を否認指摘受けました。
調査官はこう言ったのです。
「接待交際費というのは、事業に直接関連するもので
なければ必要経費として認められません。
売上に直接結びつきませんから必要経費を否認します」
この否認指摘に対する論点は何かわかるでしょうか?
前者の例は、そもそも「法律(所得税法)において
必要経費って何なの?」というのが論点です。
ですから反論するには、「いえいえ、医者だから
接待交際費は認められないという法律はありませんよね」
というのが正しい主張・反論です。
後者の例は違います。この場合、法律の要件は
合っていますから、「本当に事業に関連がない
接待交際費なのか?」という事実認定が論点です。
ということで、税務調査に置きなおして考えると、
①事実認定
②税法解釈
③当てはめ
の順番になるわけです。ということは、税務調査で
問題になっていることは3パターンに分けることができます。
①事実認定の問題:誰を接待した支出なのか?
本当に事業に関連しているのか?
②税法解釈の問題:事業に直接関連する支出でなければ
本当に必要経費にならないのか?
③当てはめの問題:医者が接待交際費を支出して
必要経費になることはありえないのか?
否認指摘の内容を、3つのどこかに分類してください。
そうすれば、何が論点なのかが明確になります。
こうしてみると、論点が明確にならないこともあります。
それは、調査官に否認指摘の法的根拠を
聞いていないような場合です。
分類しようとすれば、何が足りないのかがわかります。
ぜひ、税務調査に「法的三段論法」を取り入れてください。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
2013年5月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。