消費税の仕入税額控除
今回は「消費税の仕入税額控除」です。
ご存じの通り、消費税の仕入税額控除に関しては
課税仕入れの相手方の氏名又は名称、課税仕入れを行った年月日などを帳簿に記載し、保存することが要件となっております。
ただし、再生資源卸売業などの場合は特例があり、
課税仕入れの相手方の氏名又は名称は省略することができます。
ちなみに、これは消費税法施行令第49条第2項に書いてあります。
2 再生資源卸売業その他不特定かつ多数の者から課税仕入れを行う事業で再生資源卸売業に準ずるものに係る課税仕入れについては、法第三十条第八項第一号の規定により同条第七項の帳簿に記載することとされている事項のうち同号イに掲げる事項は、同号の規定にかかわらず、その記載を省略することができる。
これに関して争われたのが、医家向け専門の医薬品の現金卸売業※の会社の
事例です(東京高裁、平成10年9月30日)。
※病院、医院及び医者等に医薬品を販売する納入業者と、
納入業者に対して医薬品を販売する供給業者との2種類があり、
原告は供給業者にあたる。
そして、この会社の税務調査時に、
○ 仕入帳に仮名(かめい)での仕入取引があることを指摘された
○ 真実の仕入先を明らかにして欲しいと要請された
○ これを明らかにせず、また、修正申告にも応じず、更正された
となり、裁判に至ったということです。
ちなみに、税務調査段階では納税者は「業界全体を指導して欲しい」とも主張していることから、この問題は同業他社でも起きている問題なのでしょう
結果、納税者は「本件は再生資源卸売業に準じて扱うべき」
と主張しましたが、それは認められませんでした。
なぜならば、
○再生資源卸売業とは空瓶、空缶等空容器卸売業、古紙卸売業等
○このような事業は課税仕入れに係る相手が一般の不特定、かつ、
多数の消費者であり、個々の取引の金額も少額である
○相手方の氏名又は名称を帳簿に記載することを要求することが酷
という趣旨の下に上記施行令が成り立っているからです。
これに対して、今回の事例の会社は
○不特定、かつ、多数の者が課税仕入れの相手方となっている
→「全国薬局薬店名簿」から把握した薬局店、調剤薬局、大手の卸売問屋等
の同業者に対して、定期的に数千枚から数万枚程度の枚数の買取のチラシ
を郵送して、その事業者から仕入れる
○納税者は薬事法の適用を受ける一般販売業者であり、薬事法において、
譲受人の氏名などを書面に記載し、保存する義務があること
○個々の取引の相手方を特定し、その氏名等を確認することが不可能、
または、著しく困難とは考えられないこと
○1年間の総数が505件であり、仕入取引の最少額が227,000円、
最高額が10,877,000円と多額
という状況でした。
だから、「再生資源卸売業とは業態を異にすることは明らか」と判断され、
仕入税額控除は認められませんでした。
いかがでしょうか?
様々な取引形態が世の中には存在しますが、
中には相手の名前が仕入帳などに記載されていないこともあるかと思います。
また、これを明らかにしたら、仕入に影響が出るという業種もあります。
しかし、こういう場合には再生資源卸売業に該当するかどうかが
仕入税額控除を分ける大きなポイントとなるのです。
是非、覚えておいてくださいね。
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2013年6月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。