消費税還付申告を止められたら?(前半)
※2020年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
消費税の還付スキームについては、
数年おきに税制改正が実施されては
スキームに歯止めがかかる状況です。
今年10月からは「金地金スキーム」に対する
封じ込めが実施されることになっています。
さて、これとは論点を異にする消費税還付
についても、疑義が挙がっています。
現在まだ争っている段階ですが、
ムゲンエステートを筆頭とした裁判です。
実際に、この裁判での判断結果を根拠として、
税務署が消費税還付を止めた事案もあり、
今回はその具体的な論点・内容を解説し、
来週では実務的な対応とリスクを取り上げます。
まず、消費税還付申告が税務署に
止められた実際の事案を紹介します。
●不動産販売・賃貸の法人
●将来売却する目的として、課税資産の
譲渡等にのみ要する課税仕入れに該当する
として仕入税額控除
●ただし、売却までの数年の間に
家賃収入が発生している(賃貸している)
●ここ2年では消費税還付を受けている
●直近の還付申告が止められた
●税務署の担当者による根拠は
ムゲンエステートの裁判(東京地裁)
ムゲンエステート(また同内容の裁判が
複数あります)の争いについては
メディアでも取り上げられていますので、
ご存知の方が多いと思いますが、
論点を簡潔に挙げると、
【販売目的で建築・購入した建物について
売却までに賃借人がいた場合、課のみ仕入れ
になるのか、共通仕入れになるのか?】
というものです。
この問題を複雑にしている一因として、
「国税が見解を覆した」(以前は課のみ
仕入れとしていた)という論点もあります。
現在は削除されていますが、以前は
国税庁の質疑応答事例で、
「【照会要旨】事業者が、販売目的で賃借人が
居住している状態のまま買い取ったマンション
の購入について、仕入税額控除を認めるか。」
があり、「課のみ仕入れ」としていました。
さて、この論点についてはいまだ
結論はありません。なぜなら、あくまでも
個別事案ごとに判断する、だからです。
また、メディアの論調ではありますが、
現時点では裁決・地裁で納税者が負けて
いますが、これがひっくり返る可能性が
高いとも言われています。
ここで、実務上の大問題なのですが、
(課のみ仕入れとして)消費税還付申告を
止められた場合に、税務署に対して
どのように対応すべきかという点です。
そもそも論でいえば、「係争中の
(個別事案である)判決は否認根拠に
なるのか?」という疑念もあります。
※上記事案で、税務署から提示された
ムゲンエステートの判決文を共有しておきます
来週水曜の本メルマガでは、
上記を前提として、実務的な対応と
リスクについて解説しましょう。
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