消費税還付申告を止められたら?(後半)
※2020年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回から引続き、消費税の還付申告をして、
税務署から連絡があったうえで、還付を
止められた場合の対応について解説します。
まず、還付を止めることを税務署内では
「還付保留」と呼びますが、保留している
のであって、このままでは結論に至りません。
税務署も何らかの結論を出す必要があります。
還付保留された納税者側から考えると、
以後の対応は下記に分かれます。
(1)当初申告を押し通す
A:還付される(納税者の主張が通る)
B:税務調査に入られる
(還付の根拠等が不明確であるなど)
⇒
申告是認(還付)もしくは修正申告する、
または(増額)更正される
(2)当初申告を是正する修正申告を提出
ここで非常に難しい選択を迫られるのは、
(1)を選択し、Bになった場合に、
【過年度分も調査対象】になることです。
先週のメルマガで紹介した実例のように、
過年度も同じ消費税還付を受けていた場合、
論点は同じであることから、3年分もしくは
最大5年分の否認を受けるリスクがあります。
ただし、このリスクは(2)を選択しても
起こり得ます。なぜなら、今回の消費税還付
で自ら誤りを認めたわけですから、
「過年度分も修正申告で是正してください」
と指摘されてもおかしくはないわけです。
還付保留された場合は、担当官から提示された
根拠(先週の事例ではムゲンエステートの判決)
に対して、如何に反論するかに加えて、
担当官として以後の処理をどのように
考えているのかを聞き出す必要があります。
還付保留する担当官は内部の消費税担当であり、
調査に移行したいわけではない場合、
上記(2)の修正申告さえしてくれれば
問題ないと判断していることもあります。
もちろん、このようなヒアリングを実施
できても、調査部門が過去の申告(還付済み)
を遡及して税務調査をするかもしれません
(さすがに、税務調査・過去遡及をしない
約束を取り付けることはできないと思います)。
また、あくまでも税務調査による過去遡及
リスクがあると判断するのであれば、
上記(1)のように「押し通す」わけですが、
この場合「判決は個別の判断であって、
全ての事案に適用されるわけではない」
と主張することになります。
実際に、ムゲンエステートの判決や、
同じ論点の複数の裁判は、納税者が勝つ
可能性が高いなどとも言われています。
最高裁判決で確定したわけでもない、
また前提となる事実が異なる(地裁)判決
を適用されるいわれは無い、とした
主張もまた論拠として正しいと考えます。
還付保留への対応は、過去遡及・税務調査
リスクがあることから、その対応・判断は
非常に難しいわけですが、上記の
リスク・デリメリを考慮してください。
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