無予告調査の理由は開示されてなくても・・・
※2017年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
税務調査の最盛期を迎え、この時期は特に
無予告調査の事案が散見されるようになりました。
税務調査は原則として事前通知があり、
無予告調査はその例外として定められている以上、
法的要件を満たさない限り無予告調査は実施できません。
(国税通則法第74条の10と、
通達の4−7〜4−10が根拠条文)
しかし、無予告調査に入られた際に、
その理由や根拠を調査官に問いただしても、
明確な回答が得られないケースもあります。
国税内のFAQでも下記のように記載があります。
税務調査手続等に関するFAQ
(職員用 共通 平成24年11月 国税庁課税総括課)
問2−8 事前通知を行うことなく調査を
実施する場合に、納税義務者からその理由を
問われた場合、どのように説明すればよいか。
(答)
法令上、事前通知を行うことなく調査を
実施する場合にその理由を納税義務者に説明する
ことは規定されていません。また、判例上も、
実定法上特段の定めのない調査の実施の細目
については、質問検査の必要があり、かつ、
これと相手方の私的利益の衡量において
社会通念上相当な範囲にとどまる限り、権限ある
税務職員の合理的な選択に委ねられており、
事前通知を行わなかった理由についても、
質問検査等を行う上での法律上の一律の要件と
されているものではない旨を納税義務者に丁寧に
説明の上、調査への理解と協力を求めることとします。
(以下、略)
では、結局のところ無予告調査の理由等が
開示されないのであれば、理由を調査官に
問いただすのは意味がない、と思われる
かもしれませんが、そうではありません。
(1)きちんと対応する税理士だと思わせる
これは税務調査全般に言えることですが、
調査官は「言いなりになってくれる税理士」なのか、
「何かにつけ正当な反論をしてくる税理士」
なのかを見極めて、対応を変えています。
無予告調査を単純に受け入れるのではなく、
「法的要件を満たしているか」をきちんと
確認することで、調査開始後の調査官の
対応なども大きく変わってくるのです。
(2)理由は絶対に開示されないわけではない
調査官にも、外部から手に入れた資料せんなど
については守秘義務がありますので、
迂闊に無予告調査の理由を開示できないケースも
ありますが、すべてがそうではありません。
中には、理由を問いただすことで
少なくともそのヒントになるポイントを
言う調査官や事案内容もあり得るのです。
また、調査官がその理由を開示したところ、
通達などの要件を満たしておらず、その時点で
違法調査であることが判明するケースもあります。
(3)質問検査権の範囲外であれば受忍義務はない
無予告調査には法的要件があるのに
それが開示されないのであれば、本当に
適法な税務調査かどうか、判断できません。
(この点は、理論と現実が矛盾している点です)
一方、法的要件を満たさない、もしくはその
範囲を超えた税務調査は違法であって、
違法な税務調査に対して、納税者として
受忍義務はないことは明らかです。
だからこそ税理士としては、最後まで
無予告調査の理由が明らかにされないとしても、
「無予告調査が違法ではないのか」
「本当にこの無予告調査に受忍義務があるのか」
判断するために、その理由を開示するよう
要請を繰り返さなければならないのです。
無予告調査の理由が明らかにされなくとも、
税理士としての対応が調査の結果を
左右することになりますので、ぜひ注意してください。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。