無申告の税務調査対応と推計
※2020年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜のメルマガから引続き、無申告事案に
対する調査対応について解説しますが、
今回は「推計」への対応方法を取り上げます。
多くの無申告事案では、原資資料等を保存していない
がために、実額での所得・税額計算ができず、
調査官が主導で「推計」による所得計算によって
進めるケースが多くあります。
まず前提となる法律要件から確認しますが、
「推計課税」は法人税法第131条等の
規定により、要件である
・青色申告には推計課税ができない
(青色取消しすればできる)
・更正または決定する場合のみ適用できる
(修正申告には適用がない)
の2つを満たす必要があります。
ただし実務的には、調査官が(更正または)
決定をせずに期限後申告の勧奨で終わらせたい
ことから、実額と推計を織り交ぜながら
所得・税額を調整していくことになります。
これは、本来の推計課税の要件を満たさない
ものの、資料等を保存していないのは
納税者側の問題(法律違反)であることから、
課税手法については受け入れるしかありません。
そして、多くの無申告調査事案では、
調査官が提示する推計の内容は、
経費項目または額が過少になっているなど、
不当に所得額もしくは所得率が高くなっている
ケースが多いでしょう。
これは、調査官が期限後申告を勧奨した場合に
所得が多額になるように、または追加で
主張・反論されても、減らす余地のある
所得を提示した方が有利だからです。
ですから、調査官から提示された
推計の内訳・根拠を1つ1つ念査したうえで、
経常的な支出・経費なのに認められていない
項目や、少額しか認められていない経費
については反論する必要があります。
ただし(一部でも)原資資料がないからこそ
推計になっているわけなので、根拠を
もって主張・反論する必要はあります。
例えば、原資資料があるなど、実額で
計算できる期があれば、その経費率を
適用すべきと主張すること、または
進行期であっても直近の支出・経費から、
適正な経費額・経費率を明示するなどです。
このように、適正な根拠をもって
主張・反論した場合、多くのケースでは
調査官が追加で経費を認容するとは
思いますが、それでも経費を認めないなど、
調査官が譲歩しないケースもあります。
納税者側として、本来認められるべき
経費などが認められず、不当に所得が
高くなるような場合、上記の推計課税の
法律要件を持ち出し、
「それでは納得できず、期限後申告を提出
することができないので決定してください」
というのが最終的な交渉手段です。
すでに解説した通り、調査官は無申告調査で
期限後申告の勧奨に持ち込みたいのであって
決定は面倒なのでしたくないことから、
最終的な譲歩を引き出せる可能性があります。
推計には決められた計算方法はなく、
いかに論理的で、かつ根拠をもって
主張できるかが大事になります。
調査官の言いなりにならず、適正な
反論をすれば所得・税額は下がりますので
ぜひ参考にしてください。
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