物理的な付加と修繕費の関係
こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「物理的な付加と修繕費の関係」です。
固定資産の修繕を行う場合、物理的な付加が発生することもあります。
特に、それが多額である場合は資本的支出なのか?修繕費なのか?という
判断に迷うこともあります。
また、法人税基本通達7-8-1(資本的支出の例示)では「物理的に付加
した部分に係る費用の額」は資本的支出となっているので、それも判断を
迷わす一因となっているでしょう。
(資本的支出の例示)
法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち
当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる
部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば次に掲げる
ような金額は、原則として資本的支出に該当する。
(1) 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
(2) 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
(3) 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合の
その取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに
要すると認められる費用の額を超える部分の金額
(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。
しかし、この通達でも「原則として」となっている通り、
「物理的に付加した部分に係る費用の額=資本的支出」ではありませんし、
そもそも、通達は納税者を拘束するものでもありません。
実際、物理的に付加した部分に係る費用の額がありながら、修繕費として
認められた下記事例があります。
○平成13年9月20日裁決
・雨漏りするため、陸屋根に折板屋根工事を行なった
→陸屋根は平らなため、雨漏り箇所が分かりにくい
・金額は約1,100万円(Aビル)、2,200万円(Bビル)
この状況で審判所は下記と判断し、請求人の主張を認めました。
・これらの工事は応急的に行なわれたものであり、この工法が雨漏りを防ぐ
一番安価な方法であった
・過去何度となく補修工事を行っていたにもかかわらず、雨漏りが続いていた
・本件工事を行わない場合には漏水による建物各部分への影響が不可避であり、
結果的に当初予測した建物使用可能期間を短縮させることになる
・本件工事によって新たに生じた屋根裏の空間には利用価値が認められない
ことから、請求人が施工した陸屋根全体を覆う防水工事は、建物の維持管理
のための措置であったと認められる
なお、この裁決では別にC建物(陸屋根でない)の雨漏りにつき、屋根カバー
後方による修繕(1,450万円)は下記理由により、資本的支出と判断
されました。
・個別に修理ができたにもかかわらず、その屋根の上にカラートタンで屋根
全体を覆い被せた屋根カバー工法により工事を行ったもの
・耐用年数の到来が近い屋根を新たにカラートタンで覆う工事は、屋根の
耐用年数を延長する工事と認められる
・単に雨漏りする箇所のみを修繕する応急的な修復工事、すなわち、単に
その資産の通常の効用を維持させるための補修とは認められない
○平成14年8月21日裁決
・プロパンローリ出荷ポンプ漏えい対策工事290万円が争点
・調達事前合議伺書という書類に「改造」という語句が記載され、また、
ガス抜き配管を新設している
この前提で審判所の判断は下記となり、納税者の主張が認められました。
・本件漏えい対策工事は、過去2回の修繕工事でも改善されなかったために
行われたガス漏れ防止工事
・本件漏えい対策工事において、原処分庁が主張するように物理的に付加した
部分があるとしても、当該物理的な付加は、当該資産の価値を高め耐久性を
増すためというより、液化したプロパンガスを安全に出荷するために行った
補修であり、出荷ポンプとしての本来の機能を回復するためのものである
から、本件漏えい対策工事費は修繕費に該当する
いかがでしょうか?
物理的に物が付け加わっている場合、資本的支出と判断しがちですが、
そうではないのです。
なお、後者の事例でも「改造」という言葉が1つの論点になっていますが、
ある国税OB税理士が書いた書籍の中にも「改造」「改良」「補強」などの
言葉があるかないかを調査官はチェックしていると書かれています。
しかし、修繕業者は自分の仕事を依頼主にアピールするために、
税務上の修繕費に該当する工事であったとしても、このような言葉を
使うことがよくあります。
こういう論点も含めて、注意することが必要なのです。
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