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2024.06.07

特別受益と遺留分の関係2

※2023年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは前回に引き続き
遺留分を取り上げます。

タイトルは
「特別受益と遺留分の関係2」です。

今回は事業承継対策を例に
異なるケースを取り上げます。

以下の例を考えてみましょう。

■家族構成
父(75歳。社長。持株100%)
母(70歳。専業主婦)
長男(50歳。専務。後継者)
長女(48歳。専業主婦)
今この瞬間は令和元年5月だとします。

■株価
会社規模:大会社
→ 類似業種比準株価<純資産株価
→ 類似業種比準株価100%
→ 直前期で大幅な赤字となり
社長所有100%株価は5,000万円となった

■贈与実行
相続時精算課税制度を用いて
令和2年1月に贈与実行。
ただし、特別受益の持ち戻し免除
を契約に盛り込んでいる。
長男は確定申告にて申告納付は完了。
納税資金(500万円)は自己資金で
納税完了した。

■母の相続発生(一次相続)
令和3年4月に母の相続発生。
母は大きな財産はなく預金1,000万円を
父が相続した。

■父の相続発生(二次相続)
令和5年6月、相続発生。遺言なし。
相続財産は5,000万円(預金のみ)。
課税財産は1億円(精算課税贈与含む)。
相続税総額は770万円。

■相続発生(各々の主張)
長男の主張:
税理士に確認したところ
生前贈与分は贈与時の評価額で
加算される旨の回答をもらっている。

そのため・・・
相続財産は1億円となり
遺言はなく、特別受益の持ち戻し免除が
入っているが、妹が預金5,000万円
全てを相続すればよいと考えている。

長女の主張:
弁護士に確認したところ
生前贈与は相続財産の前渡しであり
特別受益の持ち戻し免除が入っていても
遺留分だけは害せないと回答があった。

遺留分の算定基礎に戻す場合、
その時に戻す財産の価額は
相続時の「時価」であると回答があった。

相続時の「時価」は相続税評価額が
当然となるとは思えない。

・相続時の相続税評価額(持株100%)
類似業種比準価額:1億円
純資産価額:2.5億円

本来であれば、「時価」を争う場合、
裁判所で争うことも想定するが、
そうなると、DCF法なども使えば
かなり上昇する可能性がある。

しかしながら、
今回は純資産価額2.5億円で評価額を
戻してくれれば納得はしたいと
考えている。

■法務の検証(遺留分)
遺留分算定を検証すると以下のとおりです。

ここでは、
純資産価額2.5億円を時価として
お互いが認めた場合を想定します。

遺留分算定基礎財産の計算における
相続人に対する生前贈与は
過去10年間持ち戻しされます
(民法1043(1)(3))。

そのため、長女の遺留分計算は
以下のとおりとなります。

相続財産5,000万円
+生前贈与2.5億円
=3億円

長女の遺留分:
3億円×1/4=7,500万円

長女は預金5,000万円を遺産分割で
取得するのみならず、2,500万円を
長男へ請求できることになります。

贈与時と相続時の評価額が異なる場合には
遺留分の考え方が複雑になりますので
注意が必要です。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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