特段の行動とは?
本ブログにおいて、「重加算税=故意性」が要件です、
ということを繰り返しお伝えしています。
調査官側からすると、納税者のやったことが
「故意=わざと」でなければ重加算税を課せない、
という「事実」に違和感をおぼえるようです。
先日、このような相談がありました。
「飲食店において、新店舗を開業した際に
いただいたお祝い金を、雑収入に計上していなかった。
さらにそのお祝い金が、祝儀袋に入ったまま
社長の自宅に保管されていたこと、また
その祝儀袋の1つが空だったことから、
お祝い金は認定賞与で重加算税と指摘されています。
これは重加算税になるのでしょうか?」
もちろん重加算税かどうかを判定するには、
調査の経緯も重要になりますが、本事案においては、
祝儀袋が社長の自宅にあるということを開示したのは
社長自身であって、調査官が見つけたわけではありません。
つまり、社長自身が「あっ、忘れてた!
祝儀は自宅に置いたままでした」と答弁しているのです。
また祝儀袋の1つが空であったことにつき、
その社長は「わからない」と主張しているのですが、
調査官は当然ながら「社長が抜いて費消したんでしょ!?」
と疑ってかかってきます。
この相談を受けた際に、私は「重加算税の要件は故意なので、
わざと祝儀を雑収入から抜いたのではない限り重加算税にはなりません」
と回答したのですが、調査官はこの見解自体を否定してきました。
「故意性など関係ない。問題なのは
行為自体が仮装もしくは隠ぺいかどうかだ」
ここで勘違いしていただきたくないのは、仮装や隠ぺいという
行為自体に、「故意性」を含んでいるということです。
「うっかり仮装」や「ミスして隠ぺい」などあり得ません。
仮装・隠ぺいという限り、わざとやっているのです。
ちなみに、重加算税の事案で、「重加算税=故意が要件」
と主張すると、調査官がこの要件自体に納得しない
ケースが多くあります(特に統括官や特官)。
上記の事案もそうだったのですが、そのような場合は
「税務調査の法律問題」(ファルクラム実務研究会)を
提示すると、納得せざるを得ない状況を作り出せます。
この本がわかりやすいというのもあると思いますが、
著者である酒井克彦先生は、国税内では有名な方だという
影響も大きいのではないでしょうか。
では、もう少し掘り下げてみましょう。
故意とは納税者の「意思の問題」であって、
納税者が「わざとじゃない!」と主張すれば
すべて重加算税でなくなる・・・わけはありません。
重加算税の判定基準として、
「外部からもうかがい得る特段の行動」があります。
これは、最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決が
もっとも有名なのですが、詳しくはこちらをご覧ください。
「税大ジャーナル」
http://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/backnumber/journal/10/pdf/10_04.pdf
この最高裁判決を援用し、判断している判決・裁決が多くあります。
例えば、公開裁決事例では
「積極的な隠ぺい、仮装行為も租税負担を免れる意図を
外部からもうかがい得る特段の行動も認められないため、
重加算税の賦課要件を満たさないとした事例」
http://www.kfs.go.jp/service/JP/86/05/index.html
においても、同じ判断基準を採用し、
「特段の行動」をしていない以上は
重加算税ではないと判断しているのです。
この判定基準にはてはめても、冒頭の相談事例は
重加算税ではないことが明らかでしょう。
「外部からもうかがい得る特段の行動」は
重加算税を判定する際の重要な基準ですので、
ぜひ税務調査で反論材料として使ってください。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
※2013年12月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。