生命保険による節税と租税回避行為
※2016年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「生命保険による節税と租税回避行為」ですが、
平成14年6月10日の裁決を取り上げます。
さて、現時点とは税制が違う時代の話ですが、がん保険、逓増定期保険を使い、
大きく節税した会社がありました。
〇 損金とした保険料は下記の通り
・ 平成9年12月期:159,498,876円
・ 平成10年12月期:262,064,415円
〇 保険料を損金に算入した後の所得金額(当初申告額)は下記の通り
・ 平成9年12月期:137,096,322円
・ 平成10年12月期:136,484,424円
もちろん、生命保険料が多額だったことだけでなく、他の事実関係も
あったのですが、国税不服審判所は下記と判断しました。
〇 次の理由から、当該行為は租税回避行為とはいえない。
・本件保険料に係る経理処理は、本件通達等の取扱いによったものであり、
その結果として各事業年度の納付すべき法人税額が、本件各生命保険契約を
締結しなかった場合と比較して減少することとなるとしても、これをもって
不当な税負担の軽減に当たるということはできない。
・原処分庁は、本件各生命保険契約を締結するに当たり、株式会社Eの
作成した「決算対策シミュレーション」の記載内容及び本件確認書が
存在することから、本件各生命保険契約は税負担の軽減を目的に締結された
ものと主張するが、請求人が、本件各生命保険契約を締結するに当たり
実質的な税負担や解約払戻金を検討することは、経営者としての経営判断の
一つであると認められるから、原処分庁の主張は採用できない。
〇原処分庁は、本件各生命保険契約は、被保険者への周知が行われていない
ことや平成10年12月期において本件がん保険契約に基づく被保険者の
一部の者が退職しているにもかかわらず当該事業年度中に解約手続が取られて
いないことを理由として、従業員等の福利厚生目的で締結されたものではない
と主張するが、従業員等に周知され、また、翌事業年度においてその手続を
取る方が解約メリットが多いことから途中での解約をしなかったものと
推認されるところ、これをもって従業員等の福利厚生目的ではないと
いうことはできない。
〇本件各生命保険契約の締結は、本件各生命保険会社との間で有効に成立
した第三者取引であることから同族会社等特有の取引ではなく、請求人の
法人税の負担を不当に減少せしめるものとも認められず、これらは法人税法
第132条第1項の同族会社等の行為又は計算には該当しないとするのが
相当である。
いかがでしょうか?
ここまで生命保険料を損金としても納税者の主張が認められているのです。
もちろん、期末で年払いした生命保険料も短期前払費用の対象になりますので、
重要性の原則に照らして判断する必要性はあります。
しかし、この原則に反しないならば、相当額の生命保険料で節税をしても、
税務調査で否認されることは間違った判断なのです。
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