留置きの現実
今回は「留置きの現実」です。
2012年末から2013年の初めにかけて、税務調査の手続きの
改正に関するセミナーで何度かお話させていただきましたが、
受講者(税理士)の勘違いで最も多いのは「留置き」でしょう。
なぜなら法改正発表後、もっともインパクトが大きかったのが
「留置き」の制度だったのですが、その後に出された
事務運営指針で納税者有利の解釈規定が発表されたからです。
これをきちんと知っておかないと、税務調査の現場で
間違った対応をしかねない結果となります。
さて、まず留置き制度の条文確認ですが、
国税通則法第74条の7(提出物件の留置き)
国税庁等又は税関の当該職員は、国税の調査について必要があるときは、当該調査において提出された物件を留め置くことができる。
非常に短い条文です。
さて、この条文に通達はあるのですが、実務に役立たないので
省略させていただくとして、大事なのは事務運営指針です。
調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sonota/120912/index.htm
第2章 基本的な事務手続及び留意事項
3 調査時における手続
(4) 帳簿書類その他の物件の提示・提出の求め
調査について必要がある場合において、質問検査等の相手方となる者に対し、帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)の提示・提出を求めるときは、質問検査等の相手方となる者の理解と協力の下、その承諾を得て行う。
というわけで結局のところ、留置きというのは調査官の
強制的な権限なのではなく、実際のところは調査対象者の
「理解と協力の下、その承諾を得て行う。」行為なのです。
ここで、税務調査において調査官が
強権的に(当然のごとく)帳簿等を持ち帰ろうとする
場合は、この規定に反していることを主張すべきです。
さらに、下記の規定が定められています。
(長いですが、全文お読みください)
(5) 提出を受けた帳簿書類等の留置き
提出を受けた帳簿書類等の留置きは、
①質問検査等の相手方となる者の事務所等で調査を行うスペースが
なく調査を効率的に行うことができない場合
②帳簿書類等の写しの作成が必要であるが調査先にコピー機がない 場合
③相当分量の帳簿書類等を検査する必要があるが、必ずしも質問検査等の相手方となる者の事業所等において当該相手方となる者に相応の負担をかけて説明等を求めなくとも、税務署や国税局内において当該帳簿書類等に基づく一定の検査が可能であり、質問検査等の相手方となる者の負担や迅速な調査の実施の観点から合理的であると認められる場合など、やむを得ず留め置く必要がある場合や、質問検査等の相手方となる者の負担軽減の観点から留置きが合理的と認められる場合に、留め置く必要性を説明し、帳簿書類等を提出した者の理解と協力の下、その承諾を得て実施する。
ここで規定されているのは、留置きというのは、
「やむを得ず留め置く必要がある場合」や、納税者の
「負担軽減の観点から留置きが合理的と認められる場合」
に行われるというものなのです。
つまり、留置きには必要性の要件があるのです。
調査官が帳簿等を持ち帰ろうとした際には、
・その必要性がどこにあるのか?
・その必要性は上記事務運営指針のどこに該当するのか?
をきちんと確認し、必要性の説明がなければ
実質的に拒否することもできるということを
理解しておかなければなりません。
そもそも、この2規定には「納税者の承諾」が
必要とされています。あくまでも留置きは
実質的に納税者の任意であるということであって、
以前(2012年まで)とほぼ変わらないのが現実と理解してください。
※ブログの内容等に関する質問は
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※2013年7月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。