相手方の氏名等の記載が無い場合のビール券と使途秘匿金
※2016年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「相手方の氏名等の記載が無い場合のビール券と使途秘匿金」
ですが、平成15年6月19日の裁決を取り上げます。
まずは、事案の概要です。
〇ばね製造業を営む審査請求人は下記事業年度において、下記金額の
ビール券を交際費等に計上。
・平成11年3月期 275,747円
・平成12年3月期 552,176円
〇ビール券の引渡しの相手方の氏名等は帳簿書類に記載されていない。
〇原処分庁は「使途秘匿金の支出に当たる」として更正。
これがみなさんの顧問先で起きたことならば、どのように反論しますか?
この前提の下、国税不服審判所は下記と判断しました。
〇措置法第62条の趣旨は、企業が相手先を秘匿するような支出は、
違法ないし不当な支出につながりやすく、それがひいては公正な取引を
阻害することにもなるので、そのような支出を極力抑制することにあると
解される。
〇そうすると、例えば、支出の時期、金額の多寡等からみて相当の支出
であると認められる金品の贈答については、公正な取引を阻害することに
つながるものではなく、相手方の住所・氏名まで一々帳簿書類に記載
しないのが通例であると認められるから、その相手方の氏名等が帳簿書類に
記載されていないことに「相当の理由」があるものと解される。
〇これを本件についてみると、
(1)ビール券は、H社を通じて通常の中元又は歳暮時期に配送されたと
認められること、
(2)ビール券の配送先は、平成13年6月25日申込み分の「ご進物
申込票」及び最新の「ご進物申込票」の控に記載されたビール券の送付先が
いずれも請求人の取引先の関係者であることから、請求人の取引先の関係者
であったと推認されること、
(3)各配送先への配送枚数からみて、ビール券は中元又は歳暮用品として
金額的に相当であると認められること
に照らしてみれば、ビール券の配送先については、これを帳簿書類に記載
しないのが通例であると認められる。
〇ビール券の引渡しの相手方の氏名等を帳簿書類に記載していないことに
「相当の理由」があるから、その相手方の氏名等を帳簿書類に記載しなかった
ことが秘匿するためであったか否かを判断するまでもなく、その引渡しは
使途秘匿金の支出には当たらないというべきである。
〇直接的には、その配送先が判明しないものの、他の贈答品と同様に、
H社から配送されたと認められ、その配送先は請求人の取引先の関係者
であると推認することができるから、ビール券の購入金額は、交際費等の額に
該当するものと認められる。
使途秘匿金は「相当の理由がなく」、「その相手方の氏名等を法人の
帳簿書類に記載していないもの」を指します。
この「相当の理由」は法令上は明らかにされていないので、上記の趣旨及び
社会通念に照らして判断することになります。
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