相続人が未成年者である場合における遺産分割協議
※2023年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「相続人が未成年者である場合における遺産分割協議」です。
国税庁 質疑応答事例/
共同相続人に該当しない親権者が
未成年者である子に代理して
遺産分割協議書を作成する場合
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/19/01.htm?fbclid=IwAR0MsTY7sIwxZimQTjVKab3uvGIUvvGhez4og4ENiqsFq8LjT3uwpje52ao
こちらの題材を使って検証します。
まずは、民法826条をご確認ください。
親権を行う父母とその子との
利益相反行為につき、特別代理人を
家庭裁判所に選任しなければならないことが
求められています。
—
(利益相反行為)
第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が
相反する行為については、親権を行う者は、その子のために
特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、
その一人と他の子との利益が相反する行為については、
親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを
家庭裁判所に請求しなければならない。
—
利益相反となる場面でよく登場するのは
遺産分割協議かと思います。
質疑応答事例における相続人は
・正妻とその子2人(成年)
・妻以外(女性丙)の方との子2人
(2人とも認知済み、かつ、
うち1人が未成年)
の合計5人です。
被相続人甲は妻以外の子2人を
認知しているため、相続人となります。
なぜならば、認知することにより
生じた親子関係に伴う法的効果は、
出生時に遡るためです(民法784条)。
妻の法定相続分が1/2
子の法定相続分が1/8
であることは特に問題ないかと思います。
4人の子のうち未成年者については
親権者がその母親(女性丙)になります。
女性丙は相続人でないため、
女性丙とその子(未成年者)の利益相反は
生じないことになります。
そのため、
女性丙の子(未成年者)の遺産分割協議には
女性丙が子の法定代理人として同意で足ります。
つまり、特別代理人の選任は不要となります
(民法826条(1))。
仮に、
女性丙の子2人とも未成年者である場合に
2人の子につき女性丙が親権行使するとなると
子同士の利益相反が生じてしまいます。
そのため、
子のうち1人は女性丙が親権行使し、
もう1人の子については、家庭裁判所に
特別代理人を選任する必要があります。
(民法826条(2))。
これと同様の記載が質疑応答事例の
注書きにありますのでご確認ください。
実務でよく生じやすい場面として
以下を挙げておきます。
1.幼い孫と養子縁組をした祖父母に相続が
発生し、その際に孫が未成年者であったケース
→ 孫と祖父母と養子縁組すると
祖父母に親権者が移転しています。
この状況下のもと、
仮に祖父が死亡した場合、
祖母と孫(養子)が利益相反の関係
となります。
孫の父(祖父母の長男)が
相続人とした場合、
孫の母(祖父母の長男の配偶者)
とは利益相反しませんが、
特別代理人の選任が必要となります。
2.夫の相続が想定よりも早くに発生した際の
相続人が妻、子(未成年者)のケース
→ 妻と子はどちらの相続人であるため
利益相反が生じます。
そのため、子には特別代理人の選任が
必要となります。
次回は、
上記1.で、祖父に続き祖母に相続が
発生し、その際に孫が未成年者であったケース
を取り上げます。
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