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2024.10.18

相続人が未成年者である場合における遺産分割協議2

※2023年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは、前回に引き続き
「相続人が未成年者である場合に
おける遺産分割協議2」です。

前回、実務でよく生じやすい場面の1つとして

1.幼い孫と養子縁組をした祖父母に相続が
発生し、その際に孫が未成年者であったケース

を取り上げました。

今回は、このケースの続きを検討します。

上記1.に少し条件を追加します。

1.幼い孫(5歳)と養子縁組をした
祖父母につき、祖父に続き祖母に相続が発生し、
その際に孫が未成年者であったケース
(孫の実父:祖父母の長男)

を取り上げます。

まずは・・・
養子縁組そのものの規制を検証します。

検討1:
祖父母と孫(5歳)との養子縁組

配偶者のある者(例えば、祖父)が
未成年者と養子縁組する場合には
配偶者(祖母)とともにしなければ
なりません(民法795)。

→ 本件においては、
祖父母と孫が養子縁組をしなければ
なりません。

検討2:
15歳未満の者(孫)との養子縁組

養子となる者が15歳未満である場合には、
その法定代理人が縁組の承諾をしなければなりません
(民法797(1))。

→ 本件においては、
孫は5歳であるため、養子縁組をする場合には、
両親の承諾が必要となります。

検討3:
未成年者(孫)との養子縁組

未成年者と養子縁組する場合には原則として、
家庭裁判所の許可が必要となります(民法798)。

ただし・・・
自己又は配偶者の直系卑属を養子と
する場合には、許可は不要となります
(民法798ただし書)。

→ 本件においては、
孫は祖父母の直系卑属であるため
家庭裁判所の許可は不要となります。

次に・・・
祖父に続き祖母に相続が発生した場合における、
孫(未成年者)が遺産分割に関与するために
必要な手続を検証します。

検討1:
未成年者の遺産分割協議は関与
できるか否か?

→ 未成年者は自ら遺産分割協議
を行うことはできません(民法5(1))。

→ 法定代理人である親権者が
遺産分割協議に参加する必要があります。

検討2:
孫(養子)の親権者は誰か?

→ 未成年者が養子縁組をした場合、
親権者は養親となります
(民法818(2))。

→ 祖父の相続発生時には、
祖母が親権者として残ります。

前回メルマガでは
相続人ではない実母が遺産分割協議に
入るために特別代理人に選任される
必要があることを解説しています。

→ 続いて祖母に相続が発生すると、
親権者不在となります。

検討3:
実務での対処方法は?

(1)未成年後見人を選任し
未成年後見人が遺産分割協議を行う。

(2)死後離縁により実親の親権を回復させた後、
親権者である実親が遺産分割協議を行う。

各手法を検証します。

(1)未成年後見人の選任
家庭裁判所へ申立を行い、
未成年後見人の選任を行います(民法840(1))。
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_12/index.html

家庭裁判所で法律専門家
(弁護士、司法書士等)が選任される
ことが多いのが現状です。

未成年後見人が遺産分割協議を
行うことになりますが、
遺産分割協議が終了しても
成年に達するまでは、後見を続ける
必要があります。

したがって・・・
・家庭裁判所の監督を受け続けます。
・定期的な報告が必要となります。
・未成年後見人の報酬が必要となります。

(2)養親との死後離縁
家庭裁判所に申立を行い、
死後離縁の許可をもらう必要があります
(民法811(6))。
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_10/index.html

死後離縁をした場合でも、
養親の相続権を失うことはありません。
(∵ 死後離縁の効果は将来に向かって養子縁組を消滅させる)

死後離縁が認められれば
両親に親権が復活します。

ただし、実父は孫と同様
祖母の共同相続人であるため
実母が法定代理人として
遺産分割協議に入ることを検討します。

民法818条3項ただし書きでは
「父母の一方が親権を行うことが
できないときは、他の一方が行う」
と規定されていますので実母は単独で
親権行使することにより遺産分割協議に
入ることが可能であるようにみえます。

しかし・・・
最高裁判例では、上記の場合における
単独での親権行使により遺産分割協議に
入ることも否定しています。
(最一小昭和35年2月25日)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53666

したがって・・・
死後離縁の選択した場合であっても、
特別代理人の選任が必要となります。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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