相続放棄で注意すべき税務論点2
※2022年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「相続放棄で注意すべき税務論点2」です。
前回は、相続放棄論点でも
「基礎控除(相法15)」
「相続税の総額計算(相法16)」を取り上げました。
今回は・・・
相続放棄に関する条文を読むために必要な
相続税法における「相続人の定義」を取り上げます。
相続税法第3条第1項
—
(相続又は遺贈により取得したものとみなす場合)
第三条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、
当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は
遺贈により取得したものとみなす。この場合において、
その者が相続人(相続を放棄した者及び相続権を失つた者を含まない。
第十五条、第十六条、第十九条の二第一項、第十九条の三第一項、
第十九条の四第一項及び第六十三条の場合並びに
「第十五条第二項に規定する相続人の数」という場合を除き、以下同じ。)
であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、
その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。
—
「その者が相続人(相続を放棄した者及び相続権を失つた者を含まない。
第十五条、第十六条、第十九条の二第一項、第十九条の三第一項、
第十九条の四第一項及び第六十三条の場合並びに
「第十五条第二項に規定する相続人の数」という場合を除き、以下同じ。)」
■原則的な取扱い
「相続を放棄した者」及び「相続権を失った者」を含まない。
→
原則的には、相続放棄した者を含まない、
つまり・・・民法上の取扱いと同様となります。
■例外的な取扱い
・第十五条(遺産に係る基礎控除)
・第十六条(相続税の総額)
・第十九条の二第一項(配偶者に対する相続税額の軽減)
・第十九条の三第一項(未成年者控除)
・第十九条の四第一項(障害者控除)
・第六十三条(相続人の数に算入される養子の数の否認)
・第十五条第二項に規定する相続人の数
という場合を除く。
→
原則的取扱いに関する修正事項です。
多くの場合が
「相続放棄をしていないものとする」
という扱いになります。
■前回メルマガの内容2つ
前回取り上げた
「基礎控除(相法15)」
「相続税の総額計算(相法16)」
については、
限定列挙された事項に入っていますので
別の取扱いが規定されています。
原則的取扱いを修正する内容は
「相続放棄がなかったものとする」というものです。
詳細は前回のメルマガの内容をご確認ください。
■生命保険金・死亡保険金の取扱い(相法12(1)五,六)
「相続人」が2つ登場します。
ご紹介するのは、生命保険金とします。
—
(相続税の非課税財産)
第十二条 次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
一~四 省略
五 相続人の取得した第三条第一項第一号に掲げる保険金
(前号に掲げるものを除く。以下この号において同じ。)については、
イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、イ又はロに定める金額に相当する部分
イ 第三条第一項第一号の被相続人のすべての相続人が取得した同号に掲げる
保険金の合計額が五百万円に当該被相続人の第十五条第二項に規定する
相続人の数を乗じて算出した金額(ロにおいて「保険金の非課税限度額」という。)
以下である場合 当該相続人の取得した保険金の金額
ロ イに規定する合計額が当該保険金の非課税限度額を超える場合
当該保険金の非課税限度額に当該合計額のうちに当該相続人の取得した
保険金の合計額の占める割合を乗じて算出した金額
—
例外的な取扱いには本条項は含まれていません。
1つ目:
「相続人の取得した第三条第一項第一号に掲げる保険金」
→
こちらは原則的な取扱いとなります。
したがって・・・
相続放棄をした者を含まないことになります。
結果として・・・
相続放棄をした者は
生命保険金の非課税枠を使えなくなります。
2つ目:
「当該被相続人の第十五条第二項に規定する相続人の数」
→
こちらは規定を修正しています。
つまり、相続放棄がなかったものとした場合の
相続人の数となります。
このように同じ条文にも
2つの規定が混在するものがありますので
条文の読み方には注意を要します。
上記を踏まえ
相続放棄をして生命保険金を取得した場合
における税務上の取扱い は以下のとおりです。
前提は以下のとおりです。
被相続人:父
相続人:母、長男、次男
生命保険金:1億円(受取人は母)
その他の相続財産:500万円 - 2,000万円
上記につき、相続人全員が相続放棄し
被相続人には、両親・兄弟姉妹はいないものとします。
相続人全員が相続放棄したため
はじめから相続人ではなかったものとなります(民法939)。
非課税枠としては
相続放棄がなかったものとなりますので
1,500万円(=500万円×3人)となります。
しかしながら、
受取人である母が相続放棄をしていますので
上記1,500万円の非課税枠を使うことは
できなくなります。
したがって
1億円全てが相続財産となります。
上記の考え方は死亡退職金についても同様となります。
次回も引き続き
相続放棄をテーマに取り上げます。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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