2015.11.04

相続税か?所得税か?

こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。

このメルマガ(金曜日)は税理士の見田村元宣が

過去の裁決、判決を中心に是認、否認のポイントを解説していきます。
 

日々の税務判断のご参考にして頂ければと思います。

さて、今回は「相続税か?所得税か?」です。

生命保険のスキームで下記方法があります。

1、祖父母が子供や孫に、父母が子供に保険料相当額を贈与する

2、受贈者が保険料負担者となる

3、保険事故発生時、解約時には一時所得課税となる

ただし、このスキームで問題となるのが「真の保険料負担者は誰なのか?」

ということです。

これに関して、争われた事例がいくつかあるので、ご紹介します。

○ 昭和59年2月27日裁決、全部取消し

・ 契約者及び保険金受取人:子供(未成年)、被保険者:父親

・ 父親が自分の預金から子供の口座に入金し、保険料の支払い

→ 贈与税の申告もしている

→ 払い込みの「行為者」は父親であるという認定事実はある

→ 親権者としての代理行為と認められた

・ 子供が受け取った保険金は一時所得と認められた

○ 昭和63年6月13日裁決、棄却

・ 契約者:母親、被保険者及び保険金受取人:子供(未成年)

・ 保険料は母親の口座から引き落とされている

・ 割戻金も母親の口座に入金されている

・ 請求人は親権者としての監護行為と主張

・ 保険料負担者は母親であり、一時所得とされた

○ 平成元年3月31日裁決、全部取消し

・ 契約者及び保険金受取人:父、被保険者:子供(未成年)

・ 子供は就職祝い金の中から現金にて第1回目の保険料を支払った

・ 子供が契約の約5か月後に他界

・ 父親が受け取った保険金は相続税の対象であると認められた

・ 関係者の証言、母が付けていた子供の就職祝い金に関する家計簿等

  により、子供が支払ったことが立証できた

○ 平成8年3月28裁決、棄却

・ 契約者及び保険金受取人:父、被保険者:子供

・ 子供が契約の約6か月後に他界

・ 保険料は父親の口座から引き落とし

・ この口座には子供が働いた給与が振り込まれていたが、契約の約1年前

  の口座残高は103円

・ 父は子供に保険料に関する領収書を発行していた

・ 保険料負担者は父親であり、一時所得とされた

いかがでしょうか?

繰り返しになりますが、保険料相当額の贈与による一時所得スキームの

最も重要な点は「真の保険料負担者は誰なのか?」ということです。

ご参考までに国税庁の事務連絡「生命保険料の負担者の判定について」を

ご紹介します(昭和58年9月)。

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 1、被相続人の死亡又は生命保険契約の満期により保険金等を取得した

   場合若しくは保険事故は発生していないが保険料の負担者が死亡した

   場合において、当該生命保険金又は当該生命保険契約に関する権利の

   課税に当たっては、それぞれ保険科の負担者からそれらを相続、遺贈

   又は贈与により取得したものとみなして、相続税又は贈与税を課税

   することとしている。

(注)生命保険金を受け取った者が保険料を負担している場合には、

 所得税(一時所得又は雑所得)が課税される。

 2、生命保険契約の締結に当たっては、生計を維持している父親等が

   契約者となり、被保険者は父親等、受取人は子供等として、

   その保険料の支払いは父親等が負担しているというのが通例である。

   このような場合には、保険料の支払いについて、父親等と子供等

   との間に贈与関係が生じないとして、相続税法の規定に基づき、

   保険事故発生時を課税時期としてとらえ、保険金を受け取った

   子供等に対して相続税又は贈与税を課税することとしている。

 3、ところが、最近、保険料支払能力のない子供等を契約者及び受取人

   とした生命保険契約を父親等が締結し、その支払保険料については、

   父親等が子供等に現金を贈与し、その現金を保険料の支払いに充てる

   という事例が見受けられるようになった。

 4、この場合の支払保険料の負担者の判定については、過去の保険料の

   支払資金は父親等から贈与を受けた現金を充てていた旨、子供等

   (納税者)から主張があった場合は、事実関係を検討の上、例えば、

   (1)毎年の贈与契約書、(2)過去の贈与税申告書、(3)所得税の

   確定申告書等における生命保険料控除の状況、(4)その他贈与の

   事実が認定できるものなどから贈与事実の心証が得られたものは、

   これを認めることとする。
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ここで、我々専門家が注意しなければならないことは下記の点です。

○ お客様がこのスキームを使っているならば、「毎年の」贈与契約書を

  作成し、適正な資金移動をしているか?

→ 法人顧問の場合、個人のことまで確認していないケースがありますが、

  この方法を採用しているか否かという確認はすべきでしょう。

○ 父親が子供(保険料負担者)の生命保険料控除証明書を年末調整や

  確定申告時に提出していないか?

→ 複数枚の控除証明書を提出された場合、適当にピックアップして

  使っているケースもあるかと思います

→ 上記の昭和59年2月27日裁決でも納税者の主張が認めらた1要因は

  子供の控除証明書を父親が使っていなかったことです

覚えておいて頂ければと思います。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

※2013年11月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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