相続税調査:贈与時効か相続財産か?(前半)
※2020年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
今回のメルマガでは、相続税における税務調査で
よく問題になりがちな「(生前)贈与」が
成立しているのか、もしくは相続財産に
含めなければならないのかについて解説します。
なお、内容が長くなるので、
今週と来週に分けて配信します。
被相続人が相続人のために、相続人名義にした
預金・有価証券などはいわゆる「名義預金」
として相続財産に含まれるわけですが、
被相続人の口座から相続人の口座へと振込が
あった場合の金銭など、生前贈与と考えられる
ケースは判断が難しくなります。
この振込など資金・財産移動に関して、
税務調査で贈与と判断され、かつ贈与税の
申告がなされていないことを前提として、
まず時系列で整理しましょう。
(1)相続開始から3年以内:生前贈与加算
(2)6年以内:贈与税の期限後申告
(ただし、偽りその他不正の行為がある場合は
除斥期間は7年に延びる)
(3)6年超:除斥期間の徒過により課税なし
上記(2)(3)の「6年~」については、
贈与税の法定申告期限が起算となります。
例えば、平成25年中に行われた贈与の場合、
贈与税の法定申告期限である
平成26年3月17日から6年を経過する日である
令和2年3月17日以降が除斥期間となります。
ですから基本的な考え方として、税務調査で
生前贈与か相続財産かでモメた場合、
6年以内であれば有利不利が生じる場合がある、
6年超であれば贈与(による時効で課税なし)
と主張した方が得にはなるわけです。
ただし、ほとんどの税務調査において調査官は
贈与と指摘することはなく、「貸付金」「預け金」
など相続財産に含めるよう指摘してきます。
これは、贈与の事実認定が難しいということも
ありますが、相続税の税務調査において
相続税の修正申告をとらないと調査官の
成績・評価にならないことが主な理由でしょう。
また上記のとおり、贈与となると
時効の問題が生じますが、名義財産という
ことであれば時効は関係ありませんので、
特に調査日から6年超の資金移動に関しては
調査官が贈与と言うことはないはずです。
さて、納税者側から「贈与」と主張するため
には、贈与の法律要件を満たしていることを
主張することが必要となるわけです。
民法第549条
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で
相手方に与える意思を表示し、相手方が
受諾をすることによって、その効力を生ずる。
このように贈与は、「双方」が贈与と
認識している必要がある(諾成契約)
わけですが、相続税の税務調査においては、
相続人=受贈者の意思は確認できても、
被相続人=贈与者が死亡していることから、
聞き取りによる意思確認ができないのは
確実で、それが問題を大きくします。
来週の水曜メルマガでは、具体的に
何を基準として贈与or相続財産と
判断するのかについて解説します。
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