2015.05.22

着眼調査と重点項目調査

私の鉄板ネタなのですが、「最近の税務調査は甘いから楽」
「税務調査の1件あたり割当日数が減っている」
という「事実」を、先日あるセミナーで話したところ、
税理士としての業歴が長い方から「久保さん、そうなんだよね!
一昔前とは税務調査の様相が変わっている感じがしている」
という意見をいただきました。

また、先日税務調査研究会後の懇親会でも、
「ここ数年、数時間で終わる税務調査が多いんですが、
対処方法ってあるんですか?」と聞かれました。

よく聞く言葉なのですが、あまり理解されていない税務調査用語が、
「着眼調査」と「重点項目調査」と呼ばれるものです。
なんとなく、「的を絞った、日数が少ない税務調査」
ということだけはイメージできそうですが・・・
それぞれ解説すると、こうなります。

着眼調査=「所得税」に関する調査対象項目を絞った税務調査で、
     納税者の方に来署してもらったり、
     文書だけでの是正で終わるものを含む

重点項目調査=「法人税」に関する調査対象項目を絞った税務調査で、
       通常2日程度の予定が半日(数時間)

まず、国税庁は平成15年に税務調査の方針を大きく変え、
個人に対する税務調査を「着眼調査」にシフトしました。

2009年3月に発表されました「最近の税務行政の動向」の
16ページを見ていただければ、平成16年から
いきなり着眼調査の件数が爆発的に増えていることがわかります。

http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/shingi-kenkyu/shingikai/090311/shiryo/pdf/01.pdf

その後、2011年3月に発表されました「最近の税務行政の動向」

http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/shingi-kenkyu/shingikai/110303/shiryo/pdf/04.pdf

を見ても、着眼調査および重点項目調査の件数内訳が
わからなくなっているのですが、着眼調査のみならず、
(法人に対する)重点項目調査の件数・割合は急増しています。

「税務調査の現状と調査事例ー 権利擁護の観点からの対応 ー」
http://www.zsk.ne.jp/zeikei564/ronbun.html

によると、「法人課税では、同時調査と重点項目調査の割合を
5:5にし(本格的には平成20年度から)、一法人に対する
調査日数を減らし20%調査件数を増加させたいとしています。
その結果調査官一人当たり5~6件の増加が見込まれています」
としています。

結局のところ、国税側が税務調査に効率性を求めており、
そのために「着眼調査」や「重点項目調査」の件数・割合
が確実に増えています。

そこで、税務調査の事前通知の際には、
予約日数が少ないと判断すれば、

「重点項目調査(もしくは着眼調査)だと思うのですが、
(調査)対象項目は何でしょうか?」

とズバリ事前に質問したほうが得策です。
これにより、ポイントが明確化し対応方法が明確になります。

また、対象項目が明らかになった場合で、
それが申告書上だけでは調査官が知りえないような項目
だった場合、「資料せん」など税務署が保有する情報から
得た端緒である可能性が高くなります。

このようなケースでは、さらにダメ元で
「資料せんと数字が合いませんか?」
と聞いてみることで、税務調査の交渉は
当初から常にこちらが主導権を持って戦うことが可能です。

 

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2012年10月当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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