短期前払費用と重要性の原則
※2016年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「短期前払費用と重要性の原則」ですが、
平成5年11月19日の裁決をご紹介します。
家賃などを利用し、短期前払費用による節税を図ることがありますが、
平成12年1月25日長崎地裁、平成17年1月13日東京地裁でも
示されている通り、重要性の原則に反するような金額については、
認めらないことになっています。
では、どの程度の金額であれば、重要性の原則に反しない金額と
言えるのでしょうか?
本件は洋服小売業を営む請求人が平成2年2月1日から平成3年1月31日
までの事業年度において前払いした家賃に関して、1,500万円の
損金算入が認められた事例です。
これに関して、国税不服審判所は下記と判断しています。
(ニ)ところで、法人税法第22条第1項において、「内国法人の各事業年度
の所得金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除
した金額とする。」と規定し、また、同条第4項において、ある原価、費用
及び損失の額をどの事業年度に計上すべきかについて、「一般に公正妥当と
認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」と規定して
いる。一般に公正妥当と認められる会計処理の基準としては、原価については、
それが収益と個別に対応するものであることから、原則として費用収益対応の
原則が採られており、費用及び損失については、販売直接費のように、収益と
個別に対応するものを除いて、原則として総体対応の原則が採られている。
また、企業会計原則注解の注1「重要性の原則の適用について」の(2)に
おいて、「前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の
乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。」と
されている。通達2−2−14の後段は、この一般に公正妥当と認められる
会計処理の基準を受けて、「法人が、前払費用の額でその支払った日から
1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その
支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の
損金の額に算入しているときは、これを認める。」と取り扱うこととして
いる。この通達2−2−14の後段の取扱いは、法人が一定の計算基準を
継続して行う会計処理で、その計算基準を行うことに相当の理由があり、
重要性の原則に照らして課税上さしたる弊害がないと認められる場合に
その適用があるものであり、費用収益の対応関係を覆してまでその適用を
認める趣旨のものではないと解される。
(ホ)以上のことから、本件金額のうち、1階部分、2階部分及び4階部分
に対応する15,000,000円は、上記(ロ)のとおり販売費及び一般
管理費の前払費用と認められるから、通達2−2−14の後段の取扱いの
適用ができることとなり、本件事業年度の損金となる。
また、本件金額のうち、3階部分に対応する5,000,000円は、
上記(ロ)のとおり■■■■■からの受取家賃と見合い関係にあるから、
通達2−2−14の後段の取扱いの適用はできないこととなり、翌事業年度
の損金となる。
(ヘ)以上の結果、請求人の所得金額は■■■■■円となり、当該金額は、
更正処分に係る所得金額■■■■■円に満たないので、更正処分はその一部を
取り消すべきである。
ちなみに、本件における裁決後の所得金額は伏字になっていますが、
これに対応する法人税額は「4,048,000円」と記載があります。
加減算の状況が不明のため、損益計算書の税引前当期利益の金額は定かでは
ありませんが、そこまで多額ではないと推定されます。
もちろん、これが全ての基準となる訳ではありませんが、1つの判断基準と
なることは確かです。
納税者の主張が認められた貴重な事例ですので、覚えておいてください。
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