短期前払費用と重要性の原則(その2)
※2018年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「短期前払費用と重要性の原則(その2)」ですが、
2つの裁決を取り上げます。
前回、「金額的な観点からの重要性の原則」を
解説しました。
では、重要性の原則とは金額的な観点のみなのでしょうか?
まず、本題の前に国税庁のホームページを確認しましょう。
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国税庁、質疑応答事例(短期前払費用の取扱いについて)
本通達の趣旨について
本通達は、1年以内の短期前払費用について、
収益との厳密な期間対応による繰延経理をすることなく、
その支払時点で損金算入を認めるというものであり、
企業会計上の重要性の原則に基づく経理処理を税務上も認める
というものです。
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「企業会計上の重要性の原則」ということから、
税務調査の前に公認会計士の監査により、
「前払費用として資産計上すべき」という指摘がされる場合がありますし、
実例も知っています。
この点、税理士はあまり考えない部分ですので、注意が必要です。
では、金額的な観点「以外」から重要性の原則が判断された事例です。
〇平成9年3月5日裁決
役員報酬は、役員が株主等からの委任を受けて業務を
遂行する対価であって、時の経過に応じて自動的、合理的に費用化
される支払利息、地代、家賃等の前払費用とは性質を異にすること
及び役員報酬は、企業の利益を生み出す重要な費用であると解されるところ、
企業会計においても重要性が乏しい費用とはいえないことから、
短期の前払費用に当たるとは認められない。
〇平成15年2月20日裁決
本件各役員報酬は請求人の業務を執行したことに対する対価として、
本件各給料及び本件各賞与は請求人の指揮命令の下に労務を
提供したことに対する対価として、それぞれ支払われるものであって、
このような人件費は、企業が営利活動を行う上で必要なものであり、
企業活動の根幹に係る行為に対する対価であることからすると、
会計科目としての重要性を有するといえる。
つまり、「勘定科目としての重要性」です。
短期前払費用はあくまでも会計上において重要性の乏しいものを
税務上も認めるというものですので、「そもそも重要性の原則とは?」
という観点が必要です。
ここは金額という観点だけでなく、勘定科目という観点もあるので、
覚えておいてください。
なお、法基通2-2-14の注書きにもありますが、
費用収益対応の原則に関連する費用も短期前払費用の対象外となります。
まとめると、短期前払費用として認められないものは
1、金額的に重要性が乏しいとは言えないもの
2、勘定科目としての重要性があるもの
3、費用収益対応の原則に当てはまる費用
となります。
ご注意ください。
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