短期前払費用と重要性の原則
※2016年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「短期前払費用と重要性の原則」ですが、
平成12年1月25日長崎地裁、平成17年1月13日東京地裁の
判決をご紹介します。
2/12のメルマガで重要性が乏しいとして、納税者の主張が
認められた事例をご紹介しました。
では、逆に重要性が乏しくないということで認められなかったのが、
上記2つの判決ですが、どの程度だったのでしょうか?
1、平成12年1月25日長崎地裁
〇平成7事業年度において支払った傭船料5,000万円のうち、
翌期分4,583万3,333円が否認。
〇本件において、本件傭船料中の前払費用相当分は4,583万3,333円
(5,000万円から前記損金算入分を控除した残額)と多額である上、
以下のような事情も認められ、原告の財務内容に占める割合や影響も大
であって、前払いした5,000万円全額を平成7事業年度の費用として
計上し、同年度の損金の額に算入することは、重要性の原則で認められる
範囲から逸脱するものであり、許されない。
〇平成7事業年度の傭船料勘定の額は前事業年度に比し246.21
パーセント増加し、平成7事業年度の工事原価勘定の総額は前事業年度に
比し43.86パーセント増加している。
〇平成7事業年度、前事業年度の各売上高に対する傭船料勘定の各割合は、
それぞれ19.78パーセント及び8.61パーセントである。
〇平成7事業年度の工事原価勘定の総額及び傭船料勘定の額に対する本件
傭船料の金額の各割合は、それぞれ16.02パーセント及び60.69
パーセントである。
〇平成7事業年度の売上高勘定及び税引前当期利益勘定に対する本件船舶の
傭船料の金額の割合は、それぞれ12.00パーセント及び284.99
パーセントである。
〇平成7事業年度の支払手形勘定残高にしめる本件傭船料に係る手形の
金額の割合は、78.82パーセントであり、同勘定残高を前事業年度と
比較すると、203.72パーセントの増加である。
2、平成17年1月13日東京地裁
〇本件各費用(見田村注:ビル等の賃借料)の額は合計2億1,272万
2,356円であって、それ自体多額なものであるうえ、原告の平成9年
3月期の当期利益2,694万5,593円の10倍近くにも上るものであり、
原告の財務内容に占める割合やその影響は大きいものと認められる。
〇原告は、本件各費用の合計額は原告の平成9年3月期の販売費及び一般
管理費(41億9,154万7,401円)の約5パーセントと少なく、
原告の財務内容に占める割合や影響が甚大であるということはできないし、
本件各費用の合計額を当期利益と比較することは不適切である旨主張するが、
本件通達が企業会計上の重要性の原則を受けたものであることに照らせば、
本件各費用の合計額を当期利益と比較することは不適切であるとはいえないし、
本件各費用の合計額が2億円を上回る多額なものであることを考慮すれば、
たとえ本件各費用の合計額が販売費及び一般管理費の約5パーセントで
あったとしても、原告の財務内容に占める割合やその影響は大きいと
評さざるを得ないから、上記主張は理由がない。
いかがでしょうか?
短期前払費用による節税は金額も多額になることもあり得ることから、
税務調査で問題になることも十分にあり得ます。
どの程度までという基準はありませんが、この運用には十分に注意し、
顧問先から相談があった場合は慎重に対応すべき問題なのです。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。