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2018.09.20

短期前払費用と重要性の原則

※2018年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「短期前払費用と重要性の原則」ですが、

複数の裁決、判決を取り上げます。

短期前払費用は企業会計における重要性が乏しいものに限って

認められることはご存知のとおりです。

そして、この重要性の原則は「金額の重要性」と「勘定科目の重要性」

という観点から考えられます。

では、前者についてですが、

どの程度であれば、重要性が乏しいと言えるのでしょうか?

複数の事例を掲載します。

1、裁決(平成14年6月10日)

これは「養鶏業」の会社において、

がん保険、逓増定期保険が問題になった事例ですが、

損金算入された生命保険料は下記のとおりです。

なお、本メルマガで掲載した事例のうち、

1と5のみが納税者の主張が認められた事例です。

ただし、1は重要性の原則は争点にはなっていませんが、

国税不服審判所は事実認定から行なうため、

請求人の主張が認められた事例として、掲載します。

・平成9年12月期:159,498,876円

・平成10年12月期:262,064,415円

その結果、申告した所得金額は下記のとおりです。

・平成9年12月期:137,096,322円

・平成10年12月期:136,484,424円

これを保険加入前の所得金額から割合を算出すると、

下記となります。

・平成9年12月期

137,096,322円+159,498,876円

=296,595,198円

159,498,876円÷296,595,198円=53.7%

・平成10年12月期

136,484,424円+262,064,415円

=398,548,839円

262,064,415円÷398,548,839円=65.7%

2、長崎地裁(平成12年1月25日)

・傭船料(船のレンタル料)5,000万円が問題になった事例ですが、

45,833,333円(11か月分)の損金が否認されたものです。

・様々な数値から比較検討がされていますが、

売上高、税引前当期利益に対する本件船舶の傭船料の金額の割合は、

それぞれ12%、284.99%でした。

3、東京地裁(平成17年1月13日)

・問題になった費用(地代家賃、広告宣伝費、旅費交通費)は

2億1,272万2,356円で、当期利益は2,694万5,593円

・2,694万5,593円+2億1,272万2,356円

=2億3,966万7,949円

・2億1,272万2,356円÷2億3,966万7,949円

=88.75%

・販売費及び一般管理費は41億9,154万7,401円

4、高松地裁(平成7年4月25日)

・介護費用保険を一時払いした事例で、

福利厚生費として計上した金額は541万5,990円

・否認された部分は539万5,228円で

申告所得金額は2,247万6,705円

・539万5,228円+ 2,247万6,705円

=2,787万1,933円

539万5,228円÷2,787万1,933円=19.3%

5、裁決(平成5年11月19日)

・前払いした家賃は1,500万円、裁決後に所得金額は1,232万円

・1,500万円+1,232万円=2,732万円(54.9%)

・1,500万円÷2,732万円=54.9%

以上のとおり、どの程度であれば重要性が乏しいと言えるかは

率からは明確に言えないのが過去の事例から言えることです。

ただし、ある著名な国税OB税理士と話をしたときに、

こんなことをお話しされていました。

〇基本的には売上と比較すべき(企業規模という意味)

〇短期前払費用が同じ額でも利益率が低い会社(売上が大きい会社)であれば、

否認されないし、利益率が高い会社(売上が低い会社)であれば、

否認されるリスクがある。

〇結果としての理由づけとして税引前当期利益などとの比較が

 されることもある。

この理屈は私も全くその通りだと思いますし、

一番最初に記載した裁決事例は養鶏業の会社のため、

3~4億円の所得を出すためには相当額の売上が必要となります。

なお、中央大学商学部教授の酒井克彦先生が書かれた書籍

「クローズアップ保険税務」(財経詳報社)の中に

下記の記載がありますので、併せてご参考になさってください。

前払費用の額が多額である場合でも、1年のルールにさえ沿っていれば

実務上問題ないというのであれば、それは誤りであろう。

通達はあくまで行政庁内部での処理の統一を図るものであるから、

本件通達を根拠として、適正公平な課税に反するほどの、

多額の短期前払費用の計上がなされるのであれば、

それが認められるべきではないと解される。

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