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2023.10.20

破産を事由とした貸倒損失の更正の請求をする場合の注意点

※2022年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガから引続き、
取引先の「破産」にかかる貸倒損失を取り上げますが、
今回は【更正の請求】をする場合の注意点です。

現実的には、取引先の破産を後になって知ることも
多いわけです。特に、BtoBの事業を行っており、
かつ取引先・顧客数が多数である法人で、

・所得(利益)が多額にでた事業年度で
貸倒損失の計上を検討する

もしくは

・関与が変わったタイミングで、売掛金等を
精査して滞留債権をピックアップする

などは、後になって破産を知る機会になります。

このような場合、更正の請求をすることになる
わけですが、実務上は貸倒損失で更正の請求をする
(した)際に気を付けるべき点が非常に多くあります。
今月5日に配信した本メルマガの実例を再掲します。

【実例】(一部省略)

法人(売上先が多数)に新たに関与(創業数十年)

実質的に回収不能の売上債権を精査(約10件)

5年以内に【破産】した取引先について
法基通9-6-1(1)に基づき更正の請求を提出

税務署より「破産は通達に載っていないことから
取下げして欲しい」旨の連絡があった

さて、この事案から学ぶべきことは下記です。

●担当官の主張を信じない

これは税務調査において貸倒損失に関して
否認指摘を受けた場合も同じなのですが、
担当者個人の見解を信じないことが大事です。

まず、税務署内の一担当者(調査官)が
貸倒損失に関して正しく理解している保証はなく、
またその理解度にはかなりバラツキがあります。

上記の実例でも、その後の税務調査において
調査官が指摘した結論・論拠が正しいわけです。
一担当者(調査官)の主張は、税務署(国税)の
公式見解ではありません。

さらに・・・先週水曜のメルマガで取り上げた、
相手方が「個人」である場合の破産ですが、
絶対的な結論も明確な論拠もありません。

例えば、「法人の不良債権処理と税務の対応」
(清文社)の91ページでは、個人の破産について
「免責許可の決定の確定の時に消滅するものとして
貸倒損失の損金算入が認められる」として、
通達9-6-1の適用と結論付けています
(損金経理要件が無いので更正の請求が可能)。

実際のところ、取引先である個人の破産については、
法人と相違して自然債務が残るものの、
免責決定をもって債権が消滅したものと認識し、
更正の請求が認められるケースが多いと思います。

結局のところ、論点がグレーであればあるほど、
その解釈論が生じるわけですから、
担当官の言い分が正しいとは限りません。

●更正の請求を(安易に)取り下げない

担当官の主張が正しいという保証はないからこそ、
更正の請求を安易に取り下げないことが大事です。
納税者側として、税務署の取下げ要請に応じる
「実益が無い」ことは下記記事を参照してください。

「税務署が要請する取下げに応じる実益はない」

少なくとも、担当官個人の見解ではなく、
審理なども通した税務署の公式見解は、
(更正の請求が通らない場合)「更正をすべき
理由がない旨の通知」を受けることです。

最終的に更正の請求が通らなかった場合
=「更正をすべき理由がない旨の通知」を受けた場合
であっても、不服申立てにいかず、
債権放棄(債務免除)することで
当期の貸倒損失に計上できる可能性もあります。

どちらにしても、更正の請求の取下げに
応じてしまうと、当初から更正の請求が
なかったものとして取り扱われることから、
後になって税務調査でひっくり返った
指摘を受ける、もしくは更正の請求の時効
=5年を徒過してしまうリスクが大きいです。

さて、ここまで「破産を事由とした貸倒損失の
更正の請求をする場合の注意点」について
実務上重要な2点を取り上げましたが、
来週水曜の本メルマガでは更正の請求で主張すべき
根拠(法律・通達・裁決)について解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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