社内旅行の「高額」とはいくらなのか?
※2019年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回の金曜本メルマガでは、社内で開催する
イベント費用が給与課税されない要件について
解説しましたが、もう1つ重要な論点として
「高額ではない」という要件があります。
高額でなければ給与課税しない、高額であれば
給与課税するというのは、所基通36-29に
「経済的利益の額が著しく多額であると認められる場合
(略)を除き、課税しなくて差し支えない。」とあり、
また同36-30における「社会通念上一般的に
行われていると認められる(略)費用」に
該当しないと解釈されるからです。
社員旅行については、個別通達が定められており、
「4泊5日以内」「50%以上の参加」で
給与課税しないと規定されています。
個別通達
「所得税基本通達36-30(課税しない経済的利益
・・・使用者が負担するレクリエーションの費用)
の運用について(法令解釈通達)」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/gensen/880525/01.htm
「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2603.htm
しかし、この中にも金額基準は明示されておらず、
上記の要件を満たしていても高額と判断されれば
給与課税されることになります。
これも「日当」と同じで明確な基準がない
わけですが、一般的に「高額な旅行」の基準は
10万円/人以内が無難かと考えます。
20万円/人以上の費用負担をして否認された
ケースは多く、例えば平成22年12月17日裁決
(その後、東京地裁平成24年12月25日判決・
東京高裁平成25年5月30日判決でも敗訴)
では、マカオ2泊3日・241,300円/人
となっていますので、20万円超の社内旅行は
高額と指摘されても仕方ないでしょう。
一方で、平成3年7月18日裁決では、
タイ3泊4日・183,000円/人が
福利厚生費として認められています。
しかし、(株)産労総合研究所のアンケート
調査結果を見ると、海外旅行の費用平均額が
おおよそ10万円程度となっていることから、
10万円程度が無難という結論です。
また、「5年に1回の社内旅行だから高額」
というロジックも難しいでしょう。
過去は本当に5年に1回だったのかもしれませんが、
以後は連年で社内旅行に行く可能性もあり、
また所得税は暦年課税ですから、
経済的利益の判定は単年で行うという
考え方の方が論理としては通っています。
もちろん、あくまでも高額であることの判断は
総合勘案であって、一概に言えるものでは
ありませんが、「高額だから給与課税」となれば
課税インパクトが大きいことから、
無難に捉えておいた方がいいでしょう。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。