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2015.08.04

福利厚生費(会議費)と交際費

さて、今回は「福利厚生費(会議費)と交際費」です。

営業部等のある部署の社員は残業も多いので、労をねぎらって、社長や役員が飲みに連れていくことが多い。

このような一部の社員のみを飲みに連れていくケースもあるかと思いますが、その場合の経費をどう処理されているでしょうか?

これを福利厚生費や会議費で処理されていることも

多いのではないでしょうか?

しかし、これが福利厚生費、会議費ではなく、

交際費として否認された事例(神戸地裁、平成4年11月25日)

もあるので注意が必要です(最高裁にて上告棄却で確定)。

この事例は

○一部の従業員のみを参加対象としていた

○参加人数は最大で20名、最小で2名、大部分は7名以内の少人数

→控訴人(納税者)の主張より

○居酒屋、中華料理屋、焼肉店、寿司屋、割烹店等での懇親会

○回数は平成元年3月から12月までの間に53回(下記表)

-----------------------------
|番号| 計上年月日 |支払い金額 |支 払 相 手 先|
|--+-------+------+---------|
| 1|元. 3. 1|154912|東   明   閣|
| 2|元. 3. 9| 16500|焼肉  映ちやん |
| 3|元. 3.13| 25752|東   明   閣|
| 4|元. 4. 3| 19630|じゅう八福知山店 |
| 5|元. 4. 3| 14100|お好み焼きどんたく|
| 6|元. 4. 3| 14110|定食・中華 味平 |
| 7|元. 5. 2| 28200|串かつ専門店八喜為|
| 8|元. 5.15| 18540|濱       正|
| 9|元. 5.29| 13500|濱       正|
|10|元. 5.30| 13140|定食・中華 味平 |
|11|元. 5.30| 14500|和   良   美|
|12|元. 6. 3| 89428|東   明   閣|
|13|元. 6. 6| 16737|一 番 街 西 鈴|
|14|元. 7.17|  4950|燿 明 飯 店  |
|15|元. 8. 8| 38000|み   さ   代|
|16|元. 8. 8| 24205|濱       正|
|17|元. 8.16| 14700|青 柳 寿 し  |
|18|元. 8.16| 17800|焼肉  映ちやん |
|19|元. 8.24| 14140|み   さ   お|
|20|元. 8.24| 15300|濱       正|
|21|元. 8.24| 16100|酒 房 呑 気 屋|
|22|元. 9. 4|  2250|中       店|
|23|元. 9. 4|  7500|割 烹 ひ ろ 栄|
|24|元. 9. 4|  9660|居酒屋 くろ兵ヱ衛|
|25|元. 9. 4| 14630|ま る も 食 堂|
|26|元. 9. 4| 10200|湯浅しようゆ   |
|27|元. 9. 4| 41800|乗合船 あしか丸 |
|28|元.10. 2| 15500|シ ヤ ネ ル  |
|29|元.10.11|  6500|酒 房 呑 気 屋|
|30|元.10.11|  2400|お好み焼かんたろう|
|31|元.10.11| 11150|割 烹 ひ ろ 栄|
|32|元.10.11| 23800|焼肉  映ちやん |
|33|元.10.11|  6700|寿司・割烹 のぐち|
|34|元.10.16|  8200|焼肉  喜 楽  |
|35|元.10.16|  9373|群 愛 飯 店  |
|36|元.11. 4| 10063|剣 菱 伊 予 路|
|37|元.11. 4| 12400|お食事処 河 千 |
|38|元.11.20| 15800|お食事処 閑古鳥 |
|39|元.11.20| 14200|酒 肆 白 鶴  |
|40|元.11.27|  7500|と   り   舟|
|41|元.11.27| 11960|鳥       文|
|42|元.12.11| 13200|田 ば た 寿 し|
|43|元.12.14| 12460|活魚寿司 まるも |
|44|元.12.18| 78014|ナ カ ハ マ  |
|45|元.12.25| 29000|焼肉  映ちやん |
|46|元.12.27| 16490|居酒屋 くろ兵ヱ衛|
|47|元. 3.13| 13100|やきとり大将   |
|48|元. 8. 8|  8100|焼肉  映ちやん |
|49|元. 8. 8|  6800|柿       屋|
|50|元.10.19| 14635|ステーキ  味 楽|
|51|元.11. 4| 12250|割 烹 ひ ろ 栄|
|52|元.11. 4| 10400|割 烹 ひ ろ 栄|
|53|元.12.11|  9352|ナ カ ハ マ  |
|---------------------------|
| 合  計     |1049631円        |
----------------------------|

この表を見ると、1回あたりの金額も多額ではないので、

高級な店に行っている訳でもないでしょう。

単純計算ではありますが、1回当たりの平均額は約19,800円です。

しかし、これが交際費として否認されているのです。

ちなみに、国税庁から発表されている「交際費等(飲食費)に関するQ&A」

によれば、5,000円基準が適用される交際費から社内飲食費※は

除かれています(根拠:措置法61条の4第3項二号の()書き)。

※社内飲食費とは、専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に

 対する接待等のために支出する飲食費をいいます。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/5065.pdf

なお、措置法61条の4第3項では「専ら従業員の慰安のために行われる

運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」は交際費から除かれています。

もちろん、「専ら」ということは一部の従業員を対象にしたものでは

ありません

結果としては納税者が負けたのですが、

上告理由文では「原判決に所論の違法はない」としながらも、

「原判決は、後記の通り法律の解釈を誤つて居り」とも判断しています。

以下、最高裁の判決文の中から興味深い部分のみをピックアップしますが、

じっくり読んで頂くと、非常に面白い内容なので、敢えて原文で記載します。

なお、条文番号は当時のものです。

○租税特別措置法第62条第1項の立法趣旨は課税所得に対し交際費の放漫な支出により之を減額せんとすることの防止にあり、資本金5千万円以下の会社に対する例外を除いて総て損金算入を認めないという原則を定めているのである。

 勿論正当な交際費は会社経営の必要な経費であるにも拘らず全く乱暴、悖戻※(はいれい)ともいえる右の如き立法がなされているのは当初(昭和32年)はともかく近年(昭和57年以降)においては税収確保のためである。

 ※ そむくこと。

○租税特別措置法第62条第1項は会社経営費用という点からみれば悖戻ともいうべき交際費損金不算入の原則を定めている同条の解釈については、正確緻密に行わなければならない。

○「第1項に規定する交際費等とは…………………接待、供応、慰安、贈答

 その他これに類する行為のために支出するもの(専ら従業員慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用その他政令で定める費用を除く。)をいう。」と規定して従業員慰安の費用は除かれる旨定めている。

「専ら…………………運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用を除く。」と明定して、行事が旅行に限るものでないことを明らかにしている。

 酒食提供の費用は含まないとは定められていないし、旅行には従業員の日常の食生活に比し遥かに上質の酒食の提供を伴うのが通常であり又数度に及ぶことを考えれば原判決は法の解釈を誤つている。

 原審も認定する如く上告人は常時その契約先十数社の企業に従業員を派遣して、多数の就労部署で業務に従事させており、その就労部署ごとに巡回的に酒食を提供して慰労を行つたのであるが、これは相手先企業の営業日、終業時刻、残業時間及び上告人本店からの距離に夫々相違があり全従業員を全員一堂集めることが不可能であつた故であり、又同じく原審が認定する如く1回当りの金額がそれ程多額ではなく、1人当たりの費用として必ずしも多額とはいえないにも拘らず社外の居酒屋、中華料理屋焼肉店、寿司屋、割烹店等で行われた懇親会等に係るものであり回数も平成元年3月から12月までの間に53回の多数に及ぶ点をかんがみると福利厚生費ではなく交際費であるという。

 しかし乍ら全従業員参加可能の企業でも運動会、演芸会、春秋旅行及び忘年会といえば5回に及ぶのであり、或は演芸会を行わず新入従業員歓迎会と入れ換えても同様5回となり派遣先十数社であれば必ずしも多いとはいえず寧ろ少い位である。

○従業員に対する料理飲食店における酒食の提供を交際費であると解するのは明らかに法律の解釈を誤つている。

 次に従業員に対する慰労のための酒食の提供は家畜に対する給餌や戦場における戦闘食の支給ではなく懇親を伴うのは至極当然のことであつて懇親の故を以つて交際費であるというのも法律の解釈を誤つている。

○料理飲食店での酒食の提供である故交際費であると考える短絡思考は社会習慣の理解を誤つて居り又先述の法的規正の無視と併せてそれによつて租税特別措置法第62条第3項の解釈を誤り第1点記載のとおりとなつているのであるから破棄さる可きものである。

いかがでしょうか。

忙しい特定の社員を社長等が飲みに連れていくことは多いかと思いますが、その処理には十分な注意を要します。

もちろん、顧問先の社長は「労をねぎらう」という心情があるので、

これを交際費として処理することには抵抗があるかもしれません。

ここは状況次第、程度問題でもあるかと思いますが、

最高裁で上告棄却という結果により、納税者が負けている事例が

存在することも事実です。

ご注意ください。

(見田村 元宣)

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

2013年4月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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