科目の間違いと重加算税
今回は「科目の間違いと重加算税」です。
他の税理士から引き継いだ顧問先について、ある勘定科目の内訳が
分からず、とりあえずそのままにするしかないということがあります。
(もちろん、どこかのタイミングで処理する必要がありますが。)
今回の事例は当初の顧問税理士の経理処理を別の税理士が踏襲し、
精査をしないまま、時が流れ、これに対して重加算税が課された事案です。
具体的には、国税不服審判所の裁決(平成23年2月23日)で、
売上と処理すべき金額が借受金で処理され、長期にわたり、
放置されていたものです。
ちなみに、TAINS番号はJ82-1-03です。
当然、借受金の残高は増加していき、会計事務所職員が納税者に指摘し、
疑問は感じていたものの、自分では原因が分からないという状況でした。
また、借受金の内訳が分かる資料の提出を税理士から求められたことも
なかった状況でもありました(借受金の一部だけ、途中で売上計上)。
この状況の中、原処分庁は
○請求人は借受金の中に売上となるべきものがあることを認識しながら、あえて適正な経理処理をせず、放置していたこと
○これに関する台帳を税理士に提出しなかったこと
などの事実により、隠ぺい又は仮装、所得を過少に申告する確定的な意図を
外部からもうかがい得る特段の行動(最高裁、平成7年4月28日)とし、重加算税を課したのでした。
これに対して、国税不服審判所は下記と判断しました。
○請求人は仮受金が増加している認識はあったものの、
請求人と税理士との間での認識の相違、意思疎通の欠如などによ り、
具体的な要因を解明することなく、正当な経理処理を行わないまま
放置されていた
○仮受金の一部を売上に振り替える処理を行っているものの、
これは仮受金の増加要因が解明されたからではない
○請求人、税理士が帳簿書類等について十分な検討をし、かつ、
意思疎通を十分に図るなどして原因を解明して適正な経理処理をすべき
であり、請求人の経理処理が適正さを欠いた処理であったことについて
非難はされるべきこと
○ただし、請求人が積極的な意思で適正な経理処理を行わず、
これを放置したとまで認められない
○誤った経理処理をもって、故意の隠ぺい又は仮装の行為、過少申告の
確定的意図を外部からうかがい得る特段の行動があったとまでいうことは
できない。
○ 重加算税は課さない
いかがでしょうか?
経理処理のミスという観点でいえば、「雑収入」とすべきところを「現金」
とし、重加算税についた争われた事例もありますが、これも納税者が
勝っています(平成14年4月25日裁決、TAINS番号F0-2-114)
単なる科目ミスでも「重加算税」と指摘されることはよくあるので、
上記2つの裁決をよく吟味して頂くといいかと思います。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
2013年5月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。