税務上の時効と除斥期間の違い
※2020年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
毎週金曜の本メルマガでは、ここまで
「貸倒損失」について解説してきましたが、
【時効】を理解していない中での
正しい理解は難しいと思います。
さて、今回はよく混同される税務上の
「時効」と「除斥期間」について解説します。
まず、わかりやすい「除斥期間」から。
これは正式には「賦課権の除斥期間」で、
国税が何年間課税できるのかを定めたものです。
国税通則法第70条などに規定されていますが、
〇通常:5年(個別税法では別途規定あり)
〇脱税の場合:7年
〇繰欠がある場合:10年
があります。
ここで大事なのは、これは「除斥期間」で
あって「時効」とは表現されないことです。
除斥期間とは【定められた年数が経過すれば
権利が消滅する期間】ですので、
上記の年数を経過すれば絶対に・自然に
賦課権がなくなります。他の要件は不要で
あって、年数だけが要件ということです。
一方で、国税の徴収権に関しては
「時効」と定められています。
国税通則法第72条(国税の徴収権の消滅時効)
国税の徴収を目的とする国の権利は、
その国税の法定納期限から5年間行使しない
ことによって、時効により消滅する。
2 国税の徴収権の時効については、
その援用を要せず、また、その利益を
放棄することができないものとする。
3 国税の徴収権の時効については、
この節に別段の定めがあるものを除き、
民法の規定を準用する。
今年4月3日の本メルマガでは、
債権の消滅時効が成立するためには
A:時効期間が経過していること
B:時効の援用がされていること
C:時効の中断(更新)・停止(猶予)事由がない
この3つの要件をすべて満たす必要が
あると解説しました。
ですから、例えば国税を滞納していた場合、
納期限から5年以上経過すれば「自然に」
滞納がなくなるわけではありません。
一般的には、国税(徴収部門)が
滞納の督促などをしているでしょうから、
「時効の中断(更新)」されることで、
滞納・支払義務はなくなりません。
督促など「時効の中断(更新)」があれば、
そこから5年をカウントすることになります。
よく、国税債権(税金の滞納はなくらない)
などと言われますが、これは年数だけでは
消滅することがなく、督促行為など
「時効の中断(更新)」事由があるからです。
このように税務上でも「時効」と「除斥期間」
は全くの別物なのですが、混同されている
ことが多く、専門家が書いたサイトなどでも
誤った記述が散見されますので注意が必要です。
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