税務署からの連絡・接触を3つに分類する
※2021年月4配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
「税務署からの連絡・接触を3つに分類する」
毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、今回は「税務署が行う
行為を3つに分類する」ことを解説します。
これは、質問検査権の行使がどの範囲までなのか理解する
前提となる論点であり、かつ税務署の指摘に基づいて
修正申告したとしても、加算税が課される・課されない
にも関わってきますので、ぜひ体系的に理解してください。
普段の実務ではあまり意識していないかと思いますが、
税務署から納税者や税理士事務所に連絡・接触がある行為は、
大きく3つの法律行為に分類することができます。
1 税務調査(質問検査権の行使)
2 行政指導
3 書面添付に基づく意見聴取
「税務調査」の種類・類型については来週の本メルマガで
解説しますので、今回は行政指導と意見聴取を解説します。
まず行政指導ですが、税務署が行う連絡・接触の多くは、
税務調査を除けば、そのほとんどがこれに該当します。
行政指導の典型的な行為は「お尋ねの送付」ですが、
他にも「提出された申告書に計算誤りはありませんか?」や、
「扶養控除対象者の所得が基準を超えているのでは?」など、
(申告内容に誤りがあった場合)あくまでも納税者自身が
自発的に修正申告を提出することを前提に、
税務署が指摘・是正を促す行為全般が行政指導です。
税務調査と行政指導の区分については、
下記の調査通達を参考にしてください。
「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係
通達の制定について(法令解釈通達)」
1-1と1-2
さて実務上、税務調査と行政指導を区分しなければ
ならない理由は2つあります。
●加算税の有無
行政指導の結果、誤り・漏れ等があり修正申告をしても
加算税が課されることはありません
●回答義務の有無
質問検査権には受忍義務がありますが、行政指導は
強制力がありませんので、回答義務はありません
そもそも、税務調査=質問検査権の行使は国税通則法に
定める法律権限ですが、行政指導は「行政手続法」に基づく
行為であり、根本的に全く別の法律行為になります。
行政手続法第32条第2項には、「行政指導に携わる者は、
その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、
不利益な取扱いをしてはならない。」と規定されており、
例えば、お尋ねの回答をしなかったからなどの理由で、
何か不利益な対応をされることはありません。
次に意見聴取です。勘違いしている税理士が多いのですが、
意見聴取は税理士法(第35条)に基づく行為で、
質問検査権の行使ではありません。ですから、
意見聴取に納税者(顧問先)の同席もできません。
書面添付制度の大きな流れは下記です。
申告書に税理士が書面添付(税理士法第33条の2)
⇒
税務署による意見聴取(税理士法第35条)
⇒
調査省略 or 実地の調査に移行
このことから、意見聴取の結果、誤り・漏れ等があって
修正申告になったとしても、加算税は課されません
(意見聴取後に実地調査に移行し、その後に修正申告を
すれば加算税は課されます)。
次回は、「税務調査」の種類・類型を解説します。
国税が実施する税務調査=質問検査権の行使といっても、
いろいろな実務上の区分がありますので、
それらのパターンを取り上げます。
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