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2022.04.08

税務署が要請する取下げに応じる実益はない

※2021年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

今回のメルマガは、税務署が要請してくる「取下げ」に対して
どのように対応すべきかについて解説します。

まず、税務実務上でいえば、取下げが法的に規定されているのは
不服申立てしかありません。

「[手続名]不服申立ての取下手続」

しかし、現実的な税務実務においては、取下げ(書の提出)という
行為にあたかも法的根拠があるかのように取り扱われています。

さて、税務署が取下げを要請してくるケースは大きく
下記の3つに分類することができるでしょう。

1 期間を途過したなど無効な申告書等を提出した場合

2 更正の請求が(税務署内で)認められない場合

3 申請等が(税務署内で)認められない場合

上記1については、例えば5年もしくは7年超の期限後申告や、
5年超の更正の請求などがこれに該当し、期限が過ぎた
申告は無効であることから、その申告書が無効であることを
確認するためにも、取下げをする意味は理解できます。

問題なのは、上記2と3で取下げをする場合です。

2で税務署が更正の請求を却下する場合、本来の手続きは
「更正をすべき理由がない旨の通知」をしなければなりません
(国税通則法第23条第4項)。

3の場合、申請を却下する旨の通知をすることになりますが、
その2と3の両方において、通知を受けた納税者は
不服申立てをすることができます。

このように、正式な手続きが規定されているにもかかわらず、
税務署が取下げを要請してくる理由はたった1つで、
「処理が面倒」というものです。

税務署からすると、取下げをしてくれれば、もともと
更正の請求や申請がなかったことと同じですから、
処理は不要となります。一方で、更正の請求や申請を
却下することになると不利益処分ですから、税務署は
理由の附記をしなければなりませんし、その後に納税者が
不服申立てをするかもしれませんから面倒なのです。

現実的にはよくあるケースとして、税務署から取下げ要請があり、
それを拒否して主張・反論をすることで、結果として
納税者側の意見が通ったという事案があります。

これは、税務署の担当者が安易に・深く検討せずに
取下げを要請し、納税者が取下げしないことから、
署内の審理担当と検討、また国税局に照会をかけたところ、
結論がひっくり返ったケースです。

結局のところ、税務署が更正の請求や申請が通らないからと
取下げ要請してきても、

・取下げして更正の請求や申請が通らない
(最初からなかったことになる=撤回)

・取下げせず却下の通知を受ける

の両方は同じ「認められなかった」という結果であり、
むしろ後者の方が「不服申立てをする権利を得た」
(実際に不服申立てするかどうかは自由)ということ、
さらには上記のように、取下げせずに粘った方が
結論がひっくり返る可能性まで加味すると、
納税者として【取下げに応じる実益は全くない】のです。

そもそも、税務署が本来的な手続きをせずに、
取下げを要請するということは、税務署にとって有利
=納税者にとって不利なことだと認識すべきです。

「取下げに応じるべきですか?」という質問・相談を
受けることもありますが、応じる意味がないのは
上記のとおりで、むしろ応じてしまうと顧問先に
不利益になることも多いので、ぜひ注意してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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