税務署の序列:税務調査のクレームが署長まで届かない理由
※2021年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
今年5月の本メルマガ「税務調査の過程で【問題】が
あったら誰に文句を言うべきか?」では、
税務調査において手続きの違法性など、クレームを
入れる相手方は「役職が上」である方が有効だと
解説しましたが、そもそも税務署内の序列・構造を
理解していない限り、適正な相手方はわかりません。
つい先日も、調査手続きに関して税務署へのクレームで、
相手方がわからないとのことで質問がありました。
なお、経緯・事情が複雑なので簡略化して紹介します。
【調査事案】
・若手調査官が承諾なく総勘定元帳のデータを、
持参したノートパソコンにコピーして持ち帰る
・調査担当部門の統括官に手続きの瑕疵について
確認したところ、その違法性を認め、謝罪あり
(そのやり取りについては録音データあり)
・謝罪の1週間ほど後に一転、統括官は
調査手続きに違法性がなかったと主張
・調査担当部門の統括官では話が通じないため、
税務署長に会わせてくれるように要請
・担当統括官は「税務署長に会わせるのは難しいので
上司である1部門統括官に」と回答
この担当統括官が言う「税務署長は難しい」
「1部門の統括官であれば」は、なぜ
このような対応になるのでしょうか。
税務署内の序列・構造を、一般企業の職格に
対応するようにイメージで表すと、
署長:社長
副署長:取締役
1部門の統括官:部長
1部門以外の統括官:課長
と考えるとわかりやすいかと思います。
※本来は税務署も国税局管轄の1機関なので
「支店」と考えるべきですが、一般企業の支店より
税務署は独立した判断・行為権限があります
一般調査部門の統括官が、次に判断を仰ぐ決裁者
(上司)は1部門の統括官ということですね。
一般企業で考えるとわかりやすいのですが、
現場で起こった問題・クレームに対して
課長が対応・判断できない場合に、いきなり
社長まで話をもっていきませんよね。
上記の調査事案でも同じで、担当統括官に対して
(間を通り越して)「税務署長に会わせてくれ」
と言っても、「とりあえず自分の上司に」
となることが多いです。
税務調査に対してクレームを入れる側からすると、
「一番偉い人と話した方が早い」というのは
間違いないわけですが、税務署の序列から考えると
統括官の次は、1部門の統括官もしくは
副署長になることがわかるかと思います。
また、1部門の統括官や副署長が権限がない
かというと、もちろんそういうわけではなく、
調査担当部門の統括官(2部門以上の、いわゆる
ナンバー統括)よりも権限・決裁権がありますので、
「税務署長はムリだが」と言われた場合、
(いったんは)上司を交渉相手とした方が
無難な対応といえるでしょう。
税務署内の序列を理解できれば、適正な
交渉相手もわかりますのでぜひ理解してください。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
著者情報