税務職員の誤指導と過少申告加算税
こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。
さて、今回は「税務職員の誤指導と過少申告加算税」です。
国税庁のウェブにも記載がある「事務運営指針」を
ご覧になったことがありますか?
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/jimu.htm
これは国税庁長官が各国税局長及び沖縄国税事務所長に発したもので、
いわゆる「上級官庁からのお達し」で税務職員が守るべきものです。
もちろん、事務運営指針には色々なものがあるのですが、
この中に過少申告加算税について定めたものがあります。
そして、国税通則法65条第4項※(正当な理由があり、過少申告加算税が
かからない場合)についての記載もあるのですが、これに関しては、
所得税と法人税で違いがあります。
※ 国税通則法65条第4項
第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた
事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する
税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて
正当な理由があると認められるものがある場合には、これらの項に
規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に
基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、
これらの項の規定を適用する。
何が違うかというと、所得税の事務運営指針にのみ
下記項目が記載されているのです。
(4)確定申告の納税相談等において、納税者から十分な資料の提出等が
あったにもかかわらず、税務職員等が納税者に対して誤った指導を行い、
納税者がその指導に従ったことにより過少申告となった場合で、かつ、
納税者がその指導を信じたことについてやむを得ないと認められる事情が
あること。
では、逆に言って、法人税の税務調査に関して税務職員の誤指導があった場合、
過少申告加算税の対象になってしまうのでしょうか?
もちろん、そうではありません。
事務運営指針に記載が無いからといって、前回の税務調査官の誤指導が
原因で過少申告になった場合は、過少申告加算税の対象にならないのです。
例えば、国税不服審判所の裁決(平成15年2月20日)があります。
ちなみに、TAINS番号は「F0-2-149」です。
(正当な理由/過少申告加算税の取消し、全部取り消し)
前回調査担当職員が、本件保険料の損金算入
について問題を指摘し、その適否を検討したにもかかわらず、法令の規定を
誤解し、何ら指導をしなかったことが推認されることから、請求人が
本件保険料を是認されたものとして、その後も当該経理処理を継続した
ことには、無理からぬ事情があり、加算税を課することが酷な場合に該当
するとして、過少申告加算税の全部を取り消した事例
だから、「税務調査官の誤指導 = 過少申告加算税の対象外」なのです。
ただし、ここで注意点があります。
上記の事例も下記の事例もそうなのですが、
税務調査官の誤指導が「推認」という形になっていることです。
※ 平成10年5月25裁決(簡易課税の事業区分の誤指導)
前年の消費税の確定申告時に、原処分庁が請求人は簡易課税制度上
卸売事業者に該当する旨指導したものと推認されることから、
請求人が自己の事業区分は第一種事業であると誤認して申告をしても
無理からぬところがあったと認められ、このことは国税通則法第65条第4項
に規定する「正当な理由」に該当するとされた事例
もちろん、「間接証拠」の積み上げで推認に至ることもあるのでしょうが、
録音などの「直接証拠」があった方が話が早いわけです。
上記2事例では、いずれの場合もこういう直接証拠は無かったのでしょう。
当然、誤指導という事実が現実的にはあったにも関わらず、
推認に至らないこともあるでしょう。
本メルマガを主催されている久保さんは常々「税務調査は録音すべき」と
主張されていますが、こういう事例を見ると、その重要性に改めて
気づかされます。
いかがでしょうか?
確定申告が終われば、本格的な税務調査の季節が始まります。
その中には前回の税務調査官の誤指導による否認事項が見つかる場合も
あるかもしれません。
そういう場合、本税は仕方がありませんが、
過少申告加算税を回避するためには、上記の2つの裁決が参考になるのです。
是非、覚えておいて頂ければと思います。
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2013年2月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。